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[国枝栄の悲願]シックスペンス「人間万事塞翁が競馬」
posted2024/05/17 09:01
text by
藤井真俊(東京スポーツ)Masatoshi Fujii
photograph by
Ryosuke Kaji / Keiji Ishikawa
GIタイトルなら十指に余るほど手にしてきた。しかしキャリアのゴールが見えた今もまだ届かないホースマンの夢。8度目のチャンスに懸ける名伯楽が、自らの挑戦の歴史と今年への期待を語った。
1990年の開業以来、国内外で挙げたGI勝利数は20以上。アパパネ、アーモンドアイという2頭の三冠牝馬を世に送り出したほか、2022年には史上15人目となるJRA通算1000勝を達成した。再来年に定年を控えた国枝栄調教師が、意外にもいまだ達成していないのが牡馬クラシックのGI制覇。一部では競馬界の七不思議とも囁かれるレコードに終止符を打つべく、今年は3戦3勝のシックスペンスで日本ダービーに挑戦する。
牡馬クラシック――とりわけダービー制覇は国枝師にとっても悲願だ。その原点は1971年のヒカルイマイだった。
「当時は高校1年生で、まだ競馬と出会って間もない頃。2月のきさらぎ賞を勝ったのを見てひと目ぼれしちゃってね。それから色々と情報を集めて、小さな牧場の生まれで、血統もサラブレッドではない、いわゆる“サラ系”であることや、アバラが1本陥没していて安く買われたなんて話を知り、ますます肩入れしちゃって。そんな背景がありながらも皐月賞を勝って、ダービーでも後方一気のすごい脚で差し切り勝ち。当時23歳だった田島良保さんの騎乗ぶりも格好良かった」
国枝師が調教助手として美浦・山崎彰義厩舎で働き始めたのは'78年から。調教師への道や、ダービーを始めとする大レースを意識するようになったのは藤沢和雄・元調教師との出会いがきっかけだった。