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星野仙一が猛批判「あなたたちは時代が止まってる」年俸10億円説も…“巨人・星野監督”、なぜ誕生しなかった? 落合博満も星野も巨人OBから嫌われた理由 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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posted2024/05/12 11:01

星野仙一が猛批判「あなたたちは時代が止まってる」年俸10億円説も…“巨人・星野監督”、なぜ誕生しなかった? 落合博満も星野も巨人OBから嫌われた理由<Number Web> photograph by KYODO

じつは2005年に巨人監督の有力候補になっていた星野仙一。その後、日本代表監督を経て、楽天監督を務めた

 特に巨人に関係するOBたちのオレ流に対する嫌悪感は在籍3シーズン目を迎えても凄まじいものがあった。もちろん、誰よりも高い給料を取り、名球会入りも拒む先輩に媚びない生き方が反感を買ったという面はあるだろう。だが、それ以上に自分たちが独占してきた、球界に絶対的な影響力を持つ「巨人軍の甘い蜜」を余所者に奪われる危機感や嫉妬が渦巻いていたのではないだろうか。

だから「巨人・星野監督」は誕生しなかった

 なお、この9年後、2005年に巨人監督候補と報じられた阪神のオーナー付シニアディレクターの星野仙一は、生え抜き以外では初の大役に破格の年俸10億円を提示されたというが、最終的に断りを入れている。星野は一連の騒動を振り返り、水面下で外様の自分の監督就任を必死に阻止しようとした、巨人OBたちの体質を強い口調で批判している。

「(ジャイアンツのフロントが)思い切って変わろうと。そういうものは伝わってきたね。ただ、それに反対するOBがたくさんいた。僕みたいな“よそもん”の、生意気な小僧が監督になると聞いて責め立てた。時代が止まってるんだろうね。野球界への危機感、ジャイアンツへの危機感がない。男のヒガミだなと思ったね。こうは絶対なりたくない、ひがまれる立場でいたいと。あなたたちがしっかりしないから、よそもんの星野の名前が挙がるんじゃないのと」(週刊ベースボール別冊冬季号 2005プロ野球総決算/ベースボール・マガジン社)

 野球人の多くが憧れた「巨人監督」や「巨人の4番打者」が、いわば日本球界の頂点に君臨していた時代。OBたちからしたら、星野や落合といった“よそもん”にその座を奪われるのだけは我慢ならなかったのだろう。中日時代は監督と選手として、決して関係が良好とは言い難い星野と落合だったが、奇しくもその野球人生において、両者とも「巨人の壁」と対峙することになる。

「フロントは俺を切りたかった」

 長嶋巨人を日本一に導いても、最年長の打率3割を記録しても、落合不要論がさかんに議論される裏には、いわば球界の盟主の既得権益を巡る、男の嫉妬が渦巻いていた。1996年シーズン、快調に打ち続ける落合とは対照的に、チームは7月6日時点で、首位広島に11.5ゲーム差も離され、4位巨人の優勝は絶望視される。そうなると、待ってましたといわんばかりに「落合外し」のシナリオが動き出すわけだ。

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