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AIが瞬時に数値化して指導やパフォーマンス改善に活用! IT企業・インテックがトランポリン日本代表に提供する演技解析システムとは?

posted2024/06/17 10:00

 
AIが瞬時に数値化して指導やパフォーマンス改善に活用! IT企業・インテックがトランポリン日本代表に提供する演技解析システムとは?<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama / INTEC

トランポリン日本代表・西岡隆成の演技をジャンプの高さ、姿勢、回転数などさまざまな視点でインテックのAIが解析する

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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Takuya Sugiyama / INTEC

10回連続でジャンプし、滞空時間の長さ、着地点の正確さ、演技の美しさ、技の難しさ、これら4つの基準の合計点で順位を競うトランポリン競技。その中でも難度点と演技点に着目し、AIと画像解析を用いた姿勢推定技術をシステム化したIT企業の最新テクノロジーについて、世界トップを目指す日本代表選手に聞いた。

 さまざまな競技の強化拠点「ハイパフォーマンススポーツセンター」。この施設を利用する競技の一つにトランポリンがある。

 日本代表の合宿を取材していると、跳び終えた選手が設置されたパソコンのモニターに目を向ける。そこに映し出されているのは練習時の映像と、その動作を解析したデータやグラフだ。AI技術を用いたこの演技解析システムが練習で活用されている。

 それは従来の課題に応えるシステムだ。

 その仕組みは、まず、練習を1台のカメラで撮影。その動画をもとに、AIによる姿勢推定技術によって人の骨格点を検出。選手の姿勢を解析し、分析した結果が示される。

 姿勢推定技術は画像や動画から身体の動きなどを推定する技術で、これまでも医療などの現場で活用されていた。ただ、トランポリンは回転する、体をひねる、まっすぐな姿勢や抱え込む姿勢、さらには逆さにもなるなど、選手が複雑な動作を行なっているだけに、技術の適用は容易ではない。

 それを可能にしたのだ。選手の動きが描画されて技を認識し、ジャンプの回数や回転を検出。回転時の腰の角度なども測定することができる。8500枚を超える画像をAIに学習させ、独自に築いた分析手法によって検出を実現したという。開発したのは富山市内に本社を構える大手システムインテグレーター「インテック」である。

4つの基準で採点されるトランポリン

 さまざまな点で画期的なシステムだが、その革新性の一つは、通常のカメラ1台の撮影で解析を可能にした点にあると開発を担当した神田柚紀は言う。

「今までならカメラを複数使用し体にマーカーをつけるモーションキャプチャーという方法が必要でしたが、それだとセッティングが大がかりになるなどの問題がありました」

 練習の現場での実用性をもたらした点にも演技解析システムのメリットがある。

 何よりもこのシステムの長所は、練習の精度を高められる点にある。

 採点競技であるトランポリンは、滞空時間による「跳躍時間点」、着地点の正確さの「移動点」、演技の美しさである「演技点」、技の難しさをみる「難度点」の4つの基準で採点される。

 跳躍時間点と移動点についてはセンサーによって測定しそれが点数となるが、演技点と難度点はジャッジの目視によって採点されている。

 試合での採点ばかりでなく、練習中も目視で動作を確かめる。高難度の技の習得のためには正しい動作、フォームが重要になる。演技点でも動作の正確さが問われるが、たとえ映像で練習を記録したとしても、人の目で動きを確認するのはかわりないため、どうしても緻密さに欠けるきらいがある。

 だが客観性のある演技解析システムがあれば動作の修正にもより正確に取り組める。同じ技を繰り返したとき、フォームはどう違ったか、どこを修正すべきかをより説得力をもって理解できる。つまりは強化のための大きなツールが登場したと言える。

 システムを活用する一人、日本代表の西岡隆成(近畿大学)は言う。

「基本的には技の終わった後に見るのですが、高さがどれくらいだったのかがグラフですぐに出るのでそういった部分や、技の終わった後の姿勢を確認します。例えば腰が曲がってしまうと減点になりますが、グラフで『ここが曲がりましたよ』と目印がつくので動作を確かめられます」

【次ページ】 西岡隆成「ふだんの練習から演技点が見られる」

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