酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
大谷翔平が“今の成績ペース”で狙えるのは三冠王でも連続本塁打王でもなく…ベッツやトラウトが達成済の大記録、さらに「過去5人だけの偉業」
posted2024/06/14 17:40
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Jayne Kamin-Oncea/Getty Images
5月までは素晴らしい活躍だった大谷翔平のバットが、やや鳴りを潜めている。6月に入ってからは――2試合連続本塁打を放ったものの――打率.205、3本塁打、6打点、OPS.732だ。「三冠王間違いなし」とか「2年連続本塁打王」とか、期待感たっぷりに書き立てていたメディアも少しおとなしくなった。
しかし筆者は、全く心配していない。ドジャースに新加入した大谷は、右ひじ手術のリハビリ中でありながら、上々の滑り出しをしたのだから。
トラウトやジャッジ、ベッツとフリーマンもタイトルは…
そもそも、MLBはNPBよりも圧倒的に競争相手が多い。どんなすごい選手でも、タイトルの長期独占などは、考えられないのだ。
MVP3回のマイク・トラウト(エンゼルス)でも主要タイトルは打点王、盗塁王各1回だけ。今を時めくアーロン・ジャッジ(ヤンキース)でも本塁打王2回、打点王1回。ドジャースの盟友ムーキー・ベッツが首位打者1回、フレディ・フリーマンも最多安打2回のみである。
紹介した選手はすべてMVP受賞者だが、そういうトップ選手でも「個人打撃タイトル」はその程度なのである。13年連続本塁打王の王貞治や、8年連続本塁打王の野村克也、7年連続首位打者のイチローというようなケースは、MLBではほぼ起こらない。
大谷は、現時点でも「望みうる最高の成績」だと言ってよいのではないか。
成績が今後もこのレベルで推移するとして――大谷の最終成績を予測すればこうなる。7試合ほど休場するとして155試合出場と想定する。
155試合620打190安39本102点35盗2盗死、率.306 OPS.955
素晴らしい成績だ。ナショナル・リーグのDHでは、ブレーブスのマルセル・オスーナが現時点で大谷を上回る本塁打、打点、打率をマークしている。そのためDH部門のシルバースラッガー賞(打撃のベストナイン)こそ難しいかもしれないが、ドジャースの首脳陣は、彼に対する1000億円超の投資が間違いでなかったことを改めて確認することだろう。
大谷翔平が狙える“ある大記録”とは
さらに言えば、この想定成績に近づけば――ある大記録が視野に入る。