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大谷翔平起用で…化粧品の売上が約20倍に! スポンサー収入MLBダントツ1位、大谷翔平「本当の広告価値」を考える
text by
内野宗治Muneharu Uchino
photograph byNanae Suzuki
posted2024/05/14 17:00
ドジャースタジアムのビジョンに大きく映し出される大谷翔平。シーズン中も新たにスポンサーが誕生しているが、その広告効果とは…
「日本での彼(大谷)は、まず第一に″culturalicon″(文化的アイコン)であり、第二に野球選手なのだ」
文化的アイコンである大谷に企業が莫大な投資をする理由は、それだけの経済的リターンを見込めると考えているからだ。たとえばコーセーのスキンケアブランド「コスメデコルテ」は、WBC開催中の2023年3月に大谷を起用した広告を展開し、その翌日には百貨店での新規購入数が通常の3.6倍、公式オンラインブティックでの販売個数が通常の約20倍という数字を叩き出した。コーセーが大谷にいくら支払っているのかは不明だが、すさまじい「大谷効果」と言えよう。
大谷広告の影響力
では、なぜ人々は「大谷が広告に出ている」というだけで、それまでは買わなかった化粧品を買うのか?
単純に、話題性のある広告によって商品の認知度が上がり、それまで商品を知らなかった人たちにも知ってもらえた、ということもあるだろう。しかしそれ以上に重要なのは、高度に情報化した現代社会において、もはや商品の「機能」で差別化を図ることは難しく、商品が持つブランドイメージや物語性こそが消費者心理に影響を与えるということだ。たとえば化粧品なら「その製品にどんな成分が入っているか」という素人にはわかりにくく目に見えない情報よりも、洗練されたデザインのパッケージや百貨店における優雅な店構え、そして芸能人やアスリートを起用した広告などが消費者の購買意欲を刺激する。消費者は、たとえ大谷が広告に登場したからといって製品の中身が変わらないことはわかっている。それでも買うのは、大谷翔平というアイコンに付随するイメージ、あるいはメッセージ性に魅せられているからだろう。
もっとも、そのイメージやメッセージ性というのは多くの場合、マスメディアによって半ば恣意的につくられたものであって、必ずしも大谷翔平という生身の人間に備わったものではない。大半の人は大谷と話したこともなければ会ったこともないが、テレビやインターネットを通して「大谷翔平」のイメージを日々膨らませ、それを消費しているにすぎない。マスメディアは人々が期待する「大谷翔平」像を創出し、それに便乗した企業が人々の消費をあおる。それこそが、スマートフォンの画面から街中のデジタルサイネージに至るまで、生活のありとあらゆるシーンを広告が支配する現代資本主義の姿だ。
いずれにしても大谷は、単なるトップアスリートにとどまらず日本最高のセレブリティ、さらには日本という国の文化的アイコンとして、日本人の生活や消費行動にまで影響を与える存在になっている。
<つづく>