- #1
- #2
オリンピックPRESSBACK NUMBER
「逆に学ばせてもらっています」“レスリング最強女子”藤波朱理20歳の父が明かす“イマドキの親子関係”「娘に怒られることも(笑)」
posted2024/04/28 17:01
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Getty Images
育てたのは娘だけではなく…レスリング界の名伯楽
ここ数年でレスリング強豪校の勢力図は大きく変わりつつある。今夏のパリオリンピックのレスリングにスポットを当ててみると、日本体育大から女子選手として初めて藤波朱理が出場する。同大の男子レスリングの歴史は古く、1949年の創部より70年以上の歴史を誇る。オリンピックでも1964年の東京大会でOBの花原勉が金メダルを獲得して以来、数多くのメダリストを輩出してきた。
そんな名門の歴史に、朱理は新たに自らの名を刻もうとしている。ここまでレスラーとしての朱理を育てたのは父親でもある藤波俊一さんだ。現役時代は国体で優勝するなどの実績を残し、引退後は三重県でいなべ総合学園高校の教員を務めながら部活やクラブでレスリングを教えていた。現在は同校の外部コーチとして指導を続ける傍ら、娘が通う日本体育大の女子レスリングのコーチを務めている。
俊一さんの指導を受けて世界に羽ばたく選手は朱理だけではない。2017年の世界選手権の男子フリースタイル57kg級で優勝し東京五輪で日本代表になった高橋侑希、同選手権男子フリースタイル70kg級で銅メダルを獲得した長男の藤波勇飛、先日キルギスで行なわれたアジア選手権で優勝した男子フリースタイル57kg級の弓矢健人、一昨年の世界選手権男子フリー70kg級を制した成國大志も、いなべ総合学園高校の出身だ。
「まさかフォールするとは…」父も驚いた急成長
勝負には実力とともに運やタイミングも必要になる。朱理にとっては、高校2年生で初出場した2020年の全日本選手権がまさにそうだった。俊一さんが内幕を明かす。
「高1のときにインターハイで優勝していたけど、全日本の中では序列が下。枠は8名だったので、申し込んだ時点では出られるかどうかわからなかったんですよ」
翌年への延期が決まっていた東京オリンピックに出場する向田(現・志土地)真優は不出場を表明していたが、同級の元世界王者の奥野春菜、前年の世界選手権55kg級で準優勝の実績を持つ入江ななみは出場する可能性が高かった。
藤波親子も当初は、五輪階級の53kg級と非五輪階級でひとつ上の55kg級で迷っていた。どちらがベストな選択になるのか――俊一さんは誰がエントリーするのか、緻密な予想を立てながら勝負に出た。
「55kg級だとたぶん枠に入れるけど、53kg級だとギリギリだった。それでも53kg級にエントリーしました。9番目だったらアウトだったけど、8番目に入りました」