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爆発的としか言えない“衝撃のKO劇”…フェザー級王者・鈴木千裕と朝倉未来、平本蓮の交錯はあるか?「実力の順列がすべてではない」RIZINの価値観
posted2024/05/01 17:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
RIZINフェザー級チャンピオン、鈴木千裕のキャッチフレーズは“天下無双の稲妻ボーイ”である。オリジナルは修斗やPRIDEで活躍した五味隆典の“天下無双の火の玉ボーイ”。実際に五味と鈴木は交友があるのだが、それだけではない。
左右のパンチを大胆に振るう鈴木のファイトスタイル、それにRIZINにおける存在のあり方そのものが、PRIDE時代の五味に似ているのだ。破天荒なまでの勢い、規格外の攻撃力、あるいはどこまでも陽性のキャラクター。圧倒的なKO劇の背景に正確な技術と戦術分析があるところも同じだと言っていい。
鈴木はMMAからキックボクシングに進出することで“倒し屋”ぶりを発揮。RIZINに参戦すると手痛い敗北を喫しながらも迫力ある闘いぶりでファンを魅了してきた。MMA2戦目の平本蓮とのストライカー対決に勝ち、連敗を味わわせたのも鈴木だ。この時、鈴木はMMA復帰3戦目だった。
昨年7月、アメリカのMMA団体ベラトールのトップ選手であるパトリシオ・ピットブルをKOして株を上げる。11月にはフェザー級王者のヴガール・ケラモフに敵地アゼルバイジャンで勝利し王座獲得。しかも下からの打撃でKOという驚愕の倒しっぷりだった。
「若い世代がベテランを引退させなきゃいけない」
4月29日の『RIZIN.46』有明アリーナ大会では初防衛戦を行なった。挑戦者はベテランの金原正徳。24歳の王者に対し41歳。PRIDE活動休止後の格闘技界で『戦極』のチャンピオンになり、大晦日には山本“KID”徳郁に勝利している。UFCにも参戦するなど“PRIDE以後、RIZIN以前”の時代に活躍してきた。
そういう選手が、4連勝で、40代でタイトルマッチへ。昨年9月の前戦では、元チャンピオンのクレベル・コイケに完勝を収めている。こちらのキャッチフレーズは“日本格闘技界、影の番長”。
RIZIN最年少チャンピオンと最年長チャレンジャーの闘い。経験値も含めた総合力では金原が上だという下馬評の中、解説を務める川尻達也はこんな見方を提示していた。
「時代を担うファイターには理屈を超えた強さがありますから」
鈴木のコーチである塩田“GoZo”歩氏は、かつて金原を指導していた。金原のUFC進出を支えた立場として「千裕くんも世界に向けてやれる選手だと自信を持ってます」と塩田氏。鈴木も「(金原と)同じものを学べているのが大きい」と言う。リスペクトしているからこそ、ベルトを守る以上に金原を超えたいという思いが強かったようだ。
「若い世代がベテランを引退させなきゃいけない。あとは任せたと言わせたい」