- #1
- #2
オリンピックPRESSBACK NUMBER
「逆に学ばせてもらっています」“レスリング最強女子”藤波朱理20歳の父が明かす“イマドキの親子関係”「娘に怒られることも(笑)」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byGetty Images
posted2024/04/28 17:01
2023年のレスリング世界選手権53kg級を制した藤波朱理。指導者でもある父・俊一さんと日の丸を掲げる
「子供のときからレスリングと英語だけは習わせていました。自分も引率で海外に行く機会があるけど、現地では英語の重要性を痛感します。コミュニケーションがとれなければ、もったいないじゃないですか。世界選手権に行く前に、英語の先生に問答のレクチャーをしっかり受けていました。最初から本人も優勝する気でいたんでしょうね」
“ともに学んでいく”親子の関係性
俊一さんは朱理にこんなことを言ったことがある。「今まで誰もやっていないことをやろうぜ」。とはいえ、全てが順風満帆というわけではない。今春には練習中に右ヒジを脱臼。その影響で4月のアジア選手権は辞退することになってしまった。一昨年の世界選手権前にも、足の甲を負傷して出場できなかった。常に全力で練習するタイプだけに、無事是名馬というわけにはいかないのだ。
ケガをしたあとの復帰までの道のりは、ふたりで話し合いながら決めている。朱理とのやりとりで、俊一さんは自分が未熟者だと感じさせられるときがあるという。
「ケガをしたときも不安をあまり表に出さない子なので、大したものだと思います。むしろ自分の方が不安になって、一緒に車に乗っているときにため息をついたりしている。僕の方からプレッシャーをかけてしまっているのかもしれない。サポートしなければならない立場なのに、逆に学ばせてもらっていますね」
減量期や試合直前など朱里がピリピリしているときには、自分が“当たられ役”でもいいとも思っている。全てはオリンピックのために。
「去年の世界選手権でアップしているときも、僕が計っている時間がちょっとでも遅れたら怒られました。普段はそうでもないんですけどね(笑)」
かつてスポーツの親子鷹といえば、漫画『巨人の星』に出てくる父・星一徹と息子・星飛雄馬のような、時には鉄拳制裁も辞さないような苛烈な親子関係が鉄板だった。時代は変わる。いまは藤波親子のように、“ともに学んでいく”関係性が求められる時代なのか。
<前編から続く>