- #1
- #2
ラグビーPRESSBACK NUMBER
元日本代表選手のラグビーアカデミーが発達障害の選手を受け入れて感じたリアル…「予想外だった」チームメイトの“意外な反応”とは?
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byElite Rugby Academy
posted2024/04/25 11:04
Elite Rugby AcademyのHCを務める廣瀬慎也教諭(左)は特別支援学校での経験も。自閉スペクトラム症とADHDの診断を受けているアカデミー生の正田信也さん(右)
「信也は以前より自分の意思を伝えられるようになりましたし、他の子ども達にとっても、すごく良い刺激です。学びの方が大きいですね」(廣瀬ヘッドコーチ)
なにより当の信也さん本人が自身の成長を実感している。
「1回言われただけでは分からない時があるんですが、分からない時も『分からないです』と言えるようになってきました。勇気がつきました」
「ラグビーは誰でもできるスポーツだということを伝えたい」
本稿のためのインタビューの最後、信也さんに“言っておきたいこと”を訊ねた。
信也さんが視線を落とし、うーん、と考え込んだ。ふと視線を上げ、言った。
「ラグビーは、誰でもできるスポーツだということを伝えたいです」
信也さんは2024年春、特別支援学校の高等部に入学した。
日本は中学校にラグビー部が少なく競技人口のボトルネックになっているが、高校になるとラグビー部は増える。しかし信也さんが通う特別支援学校にラグビー部はない。
アカデミーは信也さんの両親に「本人が希望するならば」と、中等部卒業後の継続参加を提案した。アカデミーの募集対象は小学4年から中学生だが、もともと環境不足に困っている子どもを助けるために発足したクラブだ。
息子に適した卒業後のプレー環境が見当たらず、悪戦苦闘していた両親にとっては、感動的な申し出だった。いつも「困っています」と訴える側だった。困っていますと訴える前に、感じ取り、手を差し伸べてくれたことが嬉しかった。
本人の希望は決まっている。
「これからもラグビーは続けていきたいです。頭を使いながら、体を動かすので、もっと上手になりたいという気持ちがあります」
大丈夫。もっと上手になりたい。スポーツがやりたい――そんなかけがえのない思いを大切にしてくれる大人は、この世界にはたくさんいる。