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大学野球PRESSBACK NUMBER
《佐々木麟太郎進学で注目》日本人が知らない“名門・スタンフォード運動部のリアル”…現役日本人コーチ「学生ながら“5億円超”の契約も」
text by
河田剛Tsuyoshi Kawata
photograph by(L)Tsuyoshi Kawata、(R)Nanae Suzuki
posted2024/04/09 11:03
スタンフォード大への進学を表明した花巻東高の佐々木麟太郎(右)。左はスタンフォード大学アメフト部で17年間コーチを務める河田剛さん
スポーツ推薦で大学に入学し、その競技だけに明け暮れて他の学業には目も向けない。それではアスリートに対する周囲の目は厳しくなるばかりだと思います。
佐々木選手が今回、スタンフォードに入学した価値というのはむしろMLBにしろNPBにしろ、選手として活躍できたときにこそより輝くものだと思います。プロで活躍できるような野球の能力があり、かつ異国の難関校で培った交友関係や経験値があれば、球界を超えて日本社会全体に大きな好影響を与えられるわけですから。
学生の中には肖像権ビジネスで5億円超の契約の選手も…!
実は今回の佐々木選手の入学を聞いた際、喜びと同時にある危惧も感じました。
アメリカでは2021年からNCAAとアスリート側との裁判を経て、学生アスリートが自分たちの肖像権を用いて個別に企業とスポンサー契約などを結び、金銭を受け取れるようになりました。アメフトで言えば、今季の学生No.1選手は年間で5億円を超える契約を結んでいると言われています。もちろん規模の多寡はあれど、佐々木選手も野球の活躍次第でこういった話が舞い込む可能性も十分にあります。
さて、仮にそういった事象を目の当たりにしたとき――日本のトップアスリートたちはどう考えるでしょうか? 日本で大学に行けば、多くの競技で個人でのスポンサー契約はできません。一部の大学を除けば、競技で上手く行かなくなれば社会的な評価もしてもらえないかもしれない。そう考えれば、自ずとスポーツ先進国であるアメリカの大学へ進学する有望なアスリートはどんどん増えていくのではないでしょうか。
個々の選択として、広い世界が視野に入るのはとても喜ばしいことだと思います。一方で、日本生まれ日本育ちのアスリートだった自分としては、母国のアスリートに対するスタンスに一抹の悲しさも感じてしまいます。