NumberPREMIER ExBACK NUMBER
《独占告白》「今、進むべき道だった」佐々木麟太郎が語ったスタンフォード大進学の決定的理由「失敗大歓迎。それぐらいの心意気で…」
posted2024/05/03 11:04
text by
佐々木亨Toru Sasaki
photograph by
Naoki Muramatsu/Hideki Sugiyama
【初出:発売中のNumber1094・1095号[スタンフォード大進学の決意]佐々木麟太郎「今、進むべき道だった」より】
花巻東高の卒業式前日に語った言葉
「これ、デカいですよ。採寸して、ちょっとゆとりを持って作ってもらったので。サイズ的には……5Lぐらいだと思います」
目尻を下げてクスッと笑う。そして、身長184cm、体重113kgの肉体を包み込んでいる高校の制服に優しく視線を落とす。彼が昨夏の甲子園よりもずいぶんと締まった顔でそう語ったのは、花巻東高の卒業式前日のことだ。ふとした時に素顔を見せてくれる佐々木麟太郎は、昂る胸の内をちょっとだけ覗かせ、それでいて冷静に、これから過ごすアメリカでの日々を想像して言うのだ。
「楽しみですね。失敗するのも楽しみ。失敗に対しての恐れはないですし、失敗から学ぶべきものもある。すべてがプラスになればいいと思っています」
カリフォルニア州に本部を置く名門・スタンフォード大学へ進む。年間約5万8000ドル(約870万円)とも言われている同大学の学費、そして寮費なども含めた総費用が全額免除されるフルスカラーシップでの入学は、大きな話題を呼んだ。野球ではカレッジ・ワールドシリーズに何度となく出場して、これまでメジャーリーガーも輩出している同大学は、優秀な学生が受験して、合格率がわずか3%台と言われる世界最高峰の大学として知られる。ノーベル賞にチューリング賞の受賞者は数知れず。アメリカ合衆国大統領も輩出した極めて教育指標が高い大学への進学に、世間では懐疑的な声も聞こえる。
「勉学は大丈夫か?」
「成功するのか?」
批判めいた言葉を並べ立てられる現実を、麟太郎自身はどう受け止めているのか。
「いろんな声はありますけど、自分はとにかく挑戦するしかないので。失敗することがほとんどだと思いますけど、それを成功にどんどんと変えて、自分の質を高めていければいいと思っています。将来的には僕のようにアメリカへ渡る人もいるかもしれない。失敗も含めた僕の経験と歩みが、そういう人たちの助けになればいいとも思っているんです。失敗大歓迎。それぐらいの心意気で行きたいな、と」
野球とセカンドキャリア、総合的に考えて判断
日本国内の大学進学やドラフト指名によるNPB入り、そしてMLBへの挑戦と、進路の選択肢はいくつかあった。ただ、フラットな思考で、進むべき道、または自らを高められる環境はどこかと考えた時、麟太郎の大きな希望となっていったのがアメリカの大学だった。その選択肢を真剣に考え始めたのは、昨夏の甲子園大会を終えてからだ。9月に単身で渡米。麟太郎側にアプローチがあった5つの大学を視察して、その環境や歴史、そしてアメリカの文化に触れたことで、思考の幅が速度を上げて広がった。今年1月11日から10日間ほどは、花巻東高野球部の監督であり父親でもある佐々木洋とともに再びアメリカの地を訪れ、予め絞っていた4つの大学を巡って自身の思いを再確認した。