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「さすがにこれはおかしい」K-1対RISEの対抗戦“疑惑の判定”はなぜ起きた? 専門家が指摘する「キックボクシングの判定が難しい理由」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRISE/Chiyo Yamamoto
posted2024/04/05 17:04
3月20日に行われたK-1対RISEの対抗戦。判定が読み上げられた瞬間、戸惑いの表情を浮かべるRISEの門口佳佑
専門家が語る「キックの判定が難しい理由」
ユニファイドルールを採用する最大のメリットは「情報を共有できる」点にある。「わたしはMMAの審判ですが」と前置きしたうえで、日本MMA審判機構(JMOC)副会長で清和大学教授の松宮智生はこう語る。
「MMAではルールの違いはあるけど、解釈の違いはない。『これがルールだから』というより、『このルールはこういう意味だから』という解釈まで共有できているのかなと思います。違うルールを設けるにせよ、それぞれのルールにジャッジの基準がある」
松宮はかつてキックのジャッジを務めたこともあるが、「MMAよりキックのジャッジの方が難しい」とこぼした。
「その理由はMMAのジャッジはほとんどがマストシステムだけど、キックのジャッジには10-10の同点があることだと思います。トータルマストにしろ、ラウンドマストにしろ、どっちかにしようとしたらつけられる。でも、10-10にするか10-9にするかというのは、それぞれのサジ加減じゃないですか」
マストシステムではないという点にも、今回のジャッジ問題の原因が隠されているのか。松宮はこんなことも呟く。
「もちろんユニファイドルールのシステムの中でも、『これはおかしいんじゃないの?』と思われることはよくある。そうなったときに、判定の根拠を示せるかどうかが重要だと思います」
今回の一件は、K-1側の「ホームタウンデシジョン」の一言では片づけられない。その証拠に、軍司vs.門口では3ラウンドまでほぼ互角か軍司優勢に見えたにもかかわらず、2人のジャッジが同点とし、残る1人のジャッジは門口を支持した。
また同日の『K-1 WORLD MAX 2024』70kg級トーナメント開幕戦で、タナンチャイ・シッソンピーノン(タイ)は、延長戦の末に1-2の判定でロマーノ・バクボード(オランダ)に敗れた。だが、試合後に電話でレフェリングとジャッジが悪かったことを謝罪され、改善案を求められたことを明かしている。
疑問符がつく判定に団体は関係ない。一方で、疑惑の判定がなくならなければキック業界全体の発展は絶対にない。幸い、MMAだけではなくキックボクシングにもユニファイドルールは存在する。「ルールが違うから」という理由で他団体との間に壁を作るのではなく、いまこそMMA同様、判定基準と解釈の仕方を共有すべきではないのか。