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「さすがにこれはおかしい」K-1対RISEの対抗戦“疑惑の判定”はなぜ起きた? 専門家が指摘する「キックボクシングの判定が難しい理由」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRISE/Chiyo Yamamoto
posted2024/04/05 17:04
3月20日に行われたK-1対RISEの対抗戦。判定が読み上げられた瞬間、戸惑いの表情を浮かべるRISEの門口佳佑
にもかかわらず疑問符がつく判定が続けば、どうなるのか。ライト層はキックに背を向けるだろう。さらにYA-MANの指摘通り、選手も気持ちが萎縮して対抗戦出場に後ろ向きになってしまう。そして世間から「だからキックは……」と冷やかな目で見られるのがオチなのだ。
「KOかダウンで決めたらいい」石井和義の提言
キックはボクシングとは違い、統一コミッションがない。テレビスポーツとして発展してきた性質上、各団体が独自にランキングやルールを運営するシステムが続いており、同じ階級に何名もの王者が存在する。さらに昭和の時代には、反社会的勢力とのつながりを指摘される団体も少なからず存在した。そんなイメージが世間に残っているため、問題が噴出すると叩かれやすいという側面もある。
大会後、RISEの伊藤隆代表は「K-1さんとは求めているものの違いを実感した」と怒りを滲ませた口調で対抗戦を振り返った。
「(対抗戦は)ここでいったん終了にしたい」
今年1月、アドバイザーとして21年ぶりにK-1に復帰した創始者の石井和義氏はこうしたトラブルを予言するかのように、大会前に「皆さんのお叱りを覚悟で言わせてもらうと」と前置きしたうえで、こんな提言をしていた。
「対抗戦のルールはKOかダウンかで決めて、それ以外は全部引き分けにしたらいい。そのほうが分かりやすい。対抗戦特別ルールにしたら、こっちが勝ったとか負けたとか(ジャッジの結果に)騒がなくていいし。お互いに倒せなかったら引き分け。それでいいんですよ」
確かに一理ある意見のように思われる。ただ、ひとつ気になる点がある。K-1同様、1993年にスタートしたUFCは、黎明期に全米で起こった「UFCは単なる暴力」といった反対意見をはねのけるようにルールを整備していき、現在の揺るがぬ地位を確立したということだ。
いったい、この差は何なのか。UFCをはじめとする北米のMMAプロモーションが競技として拠り所にしているものとして、ABC(Association of Boxing Commissions and Combative Sports)が規定するユニファイドルールがある。簡潔にいうと、非合法だったMMAを合法化するために作成されたルールだ。その制定にあたり、巷で批判の的となっていたサッカーボールキックや12 to 6エルボー(縦ヒジ打ち)を反則とした。