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“強すぎる41歳”ブアカーオのヒザ蹴りが突き刺さり…なぜ木村ミノルを粉砕できたのか? 魔裟斗らライバルは全員引退も「今が全盛期説」浮上
posted2024/03/27 11:03
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
耐えに耐え、最後はダイナミックに相手を倒す。かつて昭和の名レスラーが日本中を興奮の渦へと誘った“熱狂の法則”を、タイで最も著名な41歳のファイターがケージに囲まれたリアルファイトの舞台でやってのけた。
『RIZIN LANDMARK 9 in KOBE』(3月23日・神戸ワールド記念ホール)で組まれたブアカーオ・バンチャメーク(タイ)と木村“フィリップ”ミノル(Battle-Box)のキックボクシングマッチだ。
「これまでの人生で最も強烈なパンチ」を浴びて…
この一騎討ちはボーナストラックのように、大会5日前になって急きょ発表されたカードだった。当初タイの英雄は4月20日に地元で“フィリピンの英雄”マニー・パッキャオとボクシングルールによるエキシビションマッチ(3分6ラウンド)を行う予定でいた。しかしながらこのカードは流れ、夢の対決は宙ぶらりんの状態になっていた。RIZINの急なオファーは「渡りに船」だったのかもしれない。
RIZINからしてみても、ムエタイの生ける伝説にドーピング検査で二度も陽性反応が判明し出場停止が続いていた木村が挑む、というシチュエーションは興行の“最後の一押し”として最高のものだったか。
戦前は「木村有利」の予想が多かった。というのも、契約体重はブアカーオにとっては初となる74kg。もともと60kg台のライト級やスーパーライト級が適正ながら、チャンスを求め『K-1 WORLD MAX』では70kg契約で闘っていた。そこからさらにひとつ上の階級で挑むというシチュエーションは、ブアカーオにとっても大きな冒険だったのだ。
試合後、ブアカーオはこう言った。
「このような重い体重でやるのは格闘技人生で初めて。自分としても『動きが遅くなるんじゃないか』という不安がありました」
案の定、1ラウンド開始早々、木村の豪腕が火を吹いた。ブアカーオがガッチリ顔面を両腕でガードしていても、お構いなしにその上から思い切りロングフックを叩き込んでいく。ガードの上からの一撃でブアカーオがバランスを崩す場面もあった。
「効いていた攻撃はもちろんあった。予想通り相手のパンチはとても強くて重かったので、ガードの上からでも力を感じました」
試合後、ブアカーオはSNSで「これまでの人生で受けた中で最も強烈なパンチだった」と振り返っている。