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MotoGP注目の若手ペドロ・アコスタが史上3番目の早さで表彰台獲得! その才能はロッシ、ストーナー、マルケスを上回るのか?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/03/27 11:04
MotoGP昇格2戦目にしての表彰台に、喜びを露わに取材対応するアコスタ
そして8周目には先行するマルケスをあっさりと抜き去って5番手へ。その後、13周にわたってバニャイアを追撃することになるが、終盤の21周目にバニャイアを抜き去って4番手に浮上。この時点でトップの3人とは約4秒差。どう頑張っても初表彰台、初優勝には届かない距離だったが、最終ラップに2番手を走っていたビニャーレスがコースを外れて転倒し、アコスタは3番手に。最終ラップをなんとか無事に走り抜いたアコスタが、最高峰クラスでは3番目の若さとなる19歳304日で初表彰台を獲得した。
まだ幼さの残る顔をくしゃくしゃにして喜んだアコスタは、その喜びをこう語った。
「どう言っていいのか、言葉が見つからない。最終ラップ、ビニャーレスが転倒したのを見たとき、これは失敗できないぞと思った」
このレースのファステストラップの順では4番目に速かったアコスタがバニャイアの後ろを長時間走ることになったのは、ストレートの速さに勝るドゥカティをなかなか抜けなかったからだ。だが、アコスタは状況を打開するため戦略を変え、1コーナーでのブレーキング争いで無理をせず、1コーナーの立ち上がりからの加速とその先のコーナーでのブレーキングで前に出る作戦とした。これは、なかなかルーキー離れしていた。
チャンピオンの後ろで学んだこと
「今日はペコ(バニャイアの愛称)の後ろで何周も走り、本当に多くのことを学んだ。彼がどう身体を使って何をしているのか、タイヤを壊さず温存するために何をしているのかを理解することが出来たからね。プラクティスや予選ではこうした機会を得ることは難しいし、正直、今日は4秒遅れの4位でOKだと思った。それが表彰台に立てるなんて本当に信じられない。でも、まだ始まったばかり、今日はいいレースができたけれど、次のアメリカやその次のヘレスではだめかも知れないからね」
開幕戦カタールGPの決勝レースで、アコスタは一時4番手に浮上したものの9位に終わった。そのときはタイヤのマネージがまだ出来ていない、経験不足だと指摘されたが、実際はマシンの姿勢を変えるために左手で操作する「シェイプシフター」のレバーの位置が悪かったことが原因だった。これは、加速時にフロントフォークが伸びると連動してリアの車高を下げるシステムで、コーナーによってはそれを解除しなくてはならない。KTMがその対策を講じたポルトガルでアコスタは見事に結果を出してみせた。