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“飛ばないバット”狂騒曲のウラ側で…青森山田の2選手が異例の「木製バット」を選んだワケは? 背中を押した監督が語った「納得の理念」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/22 11:03
高校生では珍しい「木製バット」で2安打の青森山田の5番打者・吉川勇大。「飛ばないバット」が話題の中で、あえて木製を選んだワケは…?
髪型然り、今回の木製バットを推奨したことも、兜森は對馬と吉川の「自由」を尊重したのだ。もちろん、その根拠もしっかり持つ。
「ふたりは前の代から主力として頑張ってくれているんですが、新チームになってから力任せで打っている印象がありまして。このままだと力が伸び切らないかもしれない、と。ですから、木製を使わせている理由も、一番は本人たちがやりやすいようにやってくれればいい、ということです」
時代の流れに左右されない柔軟な思考。
若者の個性を伸ばす明確な理念。
兜森とは、新時代のマインドを常にアップデートできる指導者である。それらはすべて、勝利への執着を見据えてこそ、なのだ。
「勝利に繋がるバッティングを」…監督のブレない理念
「欲張りかもしれませんが」
兜森はかつて、そう恐縮しつつも自分が思い描くチーム育成を語ってくれたことがある。
「監督としては勝ちにいかなかったら話にならないわけですけど、選手のやりがいを生かしつつ、強いチームを育成していきたいな、と。だからといって、監督や選手がスポットライトを浴びたいからっていうわけじゃないんです。スタッフだったり、選手の親御さんだったり、野球部を支えてくださるみなさんも、『よかったな』って思えるチームにしていかなければ意味がないわけですからね」
この兜森の言葉を思い出したのは、吉川が報道陣から「新基準のバットに変わり、初めて木製バットを使った選手ということについてどう思うか?」と尋ねられた時だった。
吉川が反射的に答える。
「珍しいとは思いますけど、自分としては今までと変わらず、勝利に繋がるバッティングをすることが一番だと思っているんで」
青森山田野球部。
監督の掲げる理念に、ブレはなし。