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星稜の42歳監督にズバリ質問「脱坊主・自由は“慶応だから”できる?」松井秀喜、奥川恭伸がいた黄金期を経て…“センバツ優勝候補”の正体
posted2024/03/23 11:04
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kei Nakamura
――古くは松井秀喜さん(元ヤンキース)がいたとき、近年では奥川恭伸選手(ヤクルト)や山瀬慎之助選手(巨人)がいたとき、星稜が強いときは、選手たちがすごく自立している気がします。今年のチームはそのあたりはどうなのでしょう。
山下 私が今まで見た中では奥川たちのチームに非常に似てると思います。奥川の代は監督がいなくてもキャプテンの山瀬を中心に自分たちで練習メニューを決めていました。今のチームも個々の能力では1つ上の代の方が高かったと思うんですけど、自分たちで考える力や感性は抜けていると思います。だから、チームワークもいい。そこがいちばんの強みだと思っています。
「考える力」が出た…ある衝撃プレー
――昨秋の北信越大会の決勝、敦賀気比戦のタイブレークでも、このチームを象徴するようなスーパープレーがあったんですよね。
山下 あれはすごかったですね。うちが後攻めで、ずっと0-0で。10回表、バントを決められて、1アウト二、三塁になったんです。1点はしょうがないと考えるのが正しいのかもしれませんけど、9回まで0が続いていたので1点がすごく重くなる気がして。内野手を前に出したんです。ショートの吉田(大吾)はものすごく野球勘のある子なので、「本当にいいんですか?」というジェスチャーを送ってきたんですけど、いいんだ、いいんだ、と。
場面的にピッチャーは三振をねらいにいってくれたんですが、バットに当てられてライトの方にフライが上がった。ファウルは(犠牲フライで1点入るので)捕るなというサインまでは出せていなくて。ライトの専徒(大和)が追いかけて行ったとき、センターの芦硲(晃太/あしさこ・こうた)は「捕るな! 捕るな!」と指示を出したそうなんです。後で聞いたら、専徒は「声も聞こえてたし、自分もファウルなら落とすつもりでいました」と。結局、そのフライをファウルにしてくれて、ピッチャーが三振を取ってくれた。2アウト後、ファーストゴロで0点に抑え、その裏、うちが1点を取って勝ったんです。
――タッチアップの1点を与えないために、意図的にファウルフライを落とした。監督の意図を汲んで、それを瞬時に判断できるのは、確かにすごいですね。