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星稜の42歳監督にズバリ質問「脱坊主・自由は“慶応だから”できる?」松井秀喜、奥川恭伸がいた黄金期を経て…“センバツ優勝候補”の正体
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2024/03/23 11:04
センバツ優勝候補に挙げられる星稜ナイン(石川)
山下 守備能力はもともと高いチームだったんですけど、加えて、試合の流れを読み、どういう守備がいいのかという状況判断もできる。
2人が直訴「キャプテンをやらせてほしい」
――キャプテンの芦硲君は、自らキャプテンをやりたいと言ってきたと聞きました。
山下 去年の夏の甲子園、初戦の創成館戦で負けた日の夜でした。夕食が終わってからだったので7時半とか8時ぐらいだと思うんですけど、芦硲が私の部屋に来まして。そもそも私の部屋に生徒が尋ねてくることなんてないので驚いたんですけど、「自分にキャプテンをやらせてほしい」と。部長時代も通じて、生徒の方からやりたいと言ってきたことなんてなかったと思います。
――その場で「わかった」と?
山下 いや、通常、キャプテンはこちらが指名するんですけど、彼ともう1人、候補がいたんです。なので「もちろん、お前に引っ張ってもらわなきゃいかんよ」とだけ言って、即答はしませんでした。そうしたら、新チームの練習初日、竹下(史紘)という選手がいちばん早くに来ていて「先生、お話が」って。「どうした?」と言ったら、「僕がキャプテンとして引っ張っていきたい」と。彼がもう1人のキャプテン候補だったんです。
――芦硲君がキャプテンに立候補したことを知って、竹下君も来たわけですか。
山下 いや、そこは互いに知らなかったと思います。そのときも「もちろんお前にも引っ張ってもらわなきゃいかんよ」と言って即答はしませんでした。最終的には芦硲の方がより自分で考えて、自分の言葉で伝えることができるタイプなのでチームの可能性を広げてくれるかなと思って、彼をキャプテンに指名しました。真っ直ぐで、非常に真面目なタイプの竹下には副キャプテンとして芦硲を支えてくれ、と。
――2人もキャプテンをしたいと言ってくるなんて頼もしいですよね。元監督の林(和成)さんも選手に任せている雰囲気がありましたけど、その感じを踏襲しているからでしょうか。
山下 任せるというか、生徒に意見を聞いたりはしていましたよね。「こうしなさい」ではなくて、「これどう思う?」みたいな感じで。そこはある程度、引き継いでいるところはあるかもしれませんね。
「慶応だからできる」は本当か?
――昨年夏、「エンジョイベースボール」を掲げる慶応が優勝し、話題になりました。一方、星稜も2014年に掲げた「必笑」というスローガンが今もチームの伝統になっています。両校とも選手が自由に意見を言える雰囲気がありますし、いろいろと共通点があるように映るのですが。