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「翔平は国民の息子みたいなもの」エンゼルス時代のチームスタッフが語っていた大谷翔平の謙虚な素顔「思いやりがあって、真面目で…」
text by
ジェイ・パリスJay Paris
photograph byNanae Suzuki
posted2024/03/29 11:01
ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平
マイク・ソーシア監督の日本語はたどたどしいものの、マクナミーや日本人記者に対しては片言でも話そうとしている。誰もがその努力に敬意を表しつつ、冗談まじりで監督を褒めそやすのだった。
だが、マクナミーが表舞台に立つときは誰もが真剣だ。ある記者が、マクナミーが通訳し終える前に発言しようとしたとき、ソーシア監督はドジャースの捕手時代を思わせるような毅然とした態度でこう言った。「おい、待つんだ。グレースの話が終わっていないだろう」
グレース──優雅──という名にふさわしく、大谷の情報を求めて監督の周りに殺到する取材陣を、見事にさばいていくマクナミー。その光景は、ほぼ日常的なものとなっている。
「翔平は国民の息子みたいなものなんだって」
ソーシア監督は言葉の壁を苦にしない。野茂が入団した際にドジャースの選手だっただけでなく、それ以前にメキシコからフェルナンド・ヴァレンズエラを迎え入れる経験をしていた。ヴァレンズエラのロサンゼルスでの活躍は世間を熱狂させ、彼のファンは“フェルナンド・マニア”と呼ばれたほどだった。
「マイクは語学が堪能で、スペイン語で選手に話すこともあるし、日本語も学ぼうとしているのよ。それが彼の人柄をあらわしていると思うの。日本のメディアに対しても丁寧に対応しているし、いい関係を築いているわ。親しみやすいんでしょうね。マイクは選手や関係者をほっとさせるような雰囲気を持っているの。スペイン語や日本語を学んで言葉の壁をなくそうとする姿勢も、そうした雰囲気の理由だと思うわ。私の経験から言えば、相手が自分の国の言葉や文化を理解しようと努力してくれると、とても嬉しいものなのよ」
それにしても、なぜ日本のファンは大谷の情報をこれほど追い求め、打席に立つたび、登板するたび、そして何か発言するたびに騒ぐのだろうか。
「取材班の中に、日本ハムで以前コーチをやっていた人がいて、こう言っていたわ。翔平は国民の息子みたいなものなんだって。日本人の誰もが彼を応援していて、成功してほしいと願っているの」