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“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“進学校の10番”ギリギリまで揺れた「大学受験か、プロか」急転直下の“高卒Jリーガー誕生”ウラ話「参考書持参で入団テスト」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2024/02/19 11:02
北海道コンサドーレ札幌への加入を発表した名古屋高校・原康介(3年)
無名の存在から抜け出せない原に小さな転機が訪れたのは、高2の冬。強豪・関西学院大学サッカー部の練習に参加、レベルの高さを痛感したのだ。
「高卒プロを目指すより、大学で4年間努力した方がプロになれる可能性が高いのではないか」
こう考えた原は、プロへの思いを一度胸にしまって関西学院大進学を目指した。
全国大会出場の経歴も年代別代表選出の経歴もなかったことで「スポーツ推薦」を勝ち取ることは難しかったが、学内でも一定の成績を残していたことで「指定校推薦」を狙った。しかし、その目論見はあっけなく外れる。
トップチームでプレーするためには、練習グラウンドに近い文系のキャンパスに進むしかない。経済学部の進学を望んだが、理系専攻だった原にとっては不利に働き、枠を得ることができなかった。突きつけられた現実に、当時はかなり落ち込んだという。
考え方を変えたのは両親の一言だった。
「まだ高卒プロの道がある。むしろ、(推薦で大学が決まらなかったことで)その道が残ったじゃないか。逆によかったね」
モヤモヤした視界が一気にひらけた気持ちだった。
サッカーと勉強だけに時間を割く
東海地区の強豪大学から推薦の誘いはあったが、選手権出場を目指してまっしぐらに突き進んだ。もちろん、苦手な文系の勉強にも邁進した。冷静に第二の選択肢を残せたのは、進学校という環境も大きかっただろう。
「サッカーと勉強の時間は絶対に削りたくなかったんです」
それ以外の時間をできる限りなくした原は、学業と練習をどのように両立したかを具体的に明かす。
「8時20分から授業が始まるのですが、早起きして7時半には図書館で始業まで勉強していました。授業間の休み時間、昼休みも勉強に充てました。サッカーは練習後に少しでも時間があれば自主トレ。シュートとドリブルの練習、そして初速が足りないと思っていたのでチューブを使ってトレーニングをしていました」