Number ExBACK NUMBER
日大アメフト《悪質タックル問題》で“消えた天才QB”が「廃部」に思うこと…「卒業した後の方が人生は長い」「“今”にとらわれず俯瞰的に」
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byNaoki Kitagawa
posted2024/02/18 11:06
「悪質タックル問題」で揺れた当時の日大アメフト部でエースQBを務めた林大希は、現在関東2部リーグの東海大でコーチを務める
「大学時代を振り返ると、結果だけで見れば内田(正人)監督が率いた1年目が一番、良いんですよ。日本一になっていますから。でも、あの年のプロセスが正解だったのかというと――それは明らかに間違っていたと思います。そのことはその後の問題から見ても明らかでしょう。
結局、学生の部活では『結果』よりもそこに至る『プロセス』をしっかり学ぶことが大事なんだと思います。日本一になって、MVPを獲得して、結果を出して卒業したら――僕は何者かになれていると思っていた。でも、実際はそんなこと全くなくて。ただ『アメフトで過去に結果が出た人』でしかない。社会に出た時に、スポーツ以外のフィールドでも活躍して、何者かになれる術がある。そういうプロセスを持った人材育成の場として部活動があれば……と今は考えています」
かつてのエースが「廃部」について思うことは…?
大学2年の春に起こった「悪質タックル問題」から約6年。
日大はいま、またしても社会問題の渦中にいる。今回の事案ではついに、アメフト部の廃部にまで話は広がってしまった。このことについて、林はどう考えているのだろうか。
「選手目線で言えば、現役の選手たちが言っていることは全部正しいと思う一方で、全部間違いでもあると思いました。これだけ社会的な関心事になってしまうと、どうしても世間で騒がれている部分しか見えなくなってしまう。でも、選手たち自身ももっと本質を見て、違う部分に目を向けた方がいいんじゃないかなと思います」
事件の“当事者”ではない自分たちには本当に問題がなかったのか。自分たちが本当に大切にすべきことは何なのか。林は「打ち込んできた、関わってきた日大フェニックスは大切なものではあるけれど、人生のすべてではない。大学を卒業した後の方が人生は長いんです。“今”にとらわれず、俯瞰的にものごとを見て考えてほしい」と話す。
林は社会人となったいまでも、在学中に試練に揉まれた経験を思い出すことがあるという。あの騒動を通して、社会に出てからも通用する教訓を得られたと感じている。