Number ExBACK NUMBER
日大アメフト《悪質タックル問題》で“消えた天才QB”が「廃部」に思うこと…「卒業した後の方が人生は長い」「“今”にとらわれず俯瞰的に」
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph byNaoki Kitagawa
posted2024/02/18 11:06
「悪質タックル問題」で揺れた当時の日大アメフト部でエースQBを務めた林大希は、現在関東2部リーグの東海大でコーチを務める
小学1年生から16年続けてきた週末の練習がなくなると、時間を持て余した。フットボールと同じ熱量で打ち込める「何か」は、どうしても見つけることができなかった。
大学スポーツ=目標達成のプロセスを学ぶ場であるべき
2年後の2023年夏、林は縁あって東海大学トライトンズのコーチに就任する。東海大は現在、関東2部リーグに所属するチームで、かつての日大のような超強豪校というわけではない。それでも声をかけられたとき、林は二つ返事で引き受けたという。
林自身は、日大に入る前は、いわゆる“弱小チーム”である大阪府立大正高校(※高2時に関大一高から転校)でプレーしており、トップレベルではないフットボールの経験もあった。また、日大で過ごした4年間の学びからも、頂点を目指すことだけが学生フットボールの意義ではないとも考えていたという。
その背景には、橋詰監督から就任初年度に受けた教えがあった。
「BIG8(1部下位リーグ)で今、すぐに日本一になれる環境にいなくても、『目標は日本一にできるぞ』と言われて。試合結果としては日本一にはなれないけど、チーム作りや練習への取り組み自体は『日本一のレベルにできるよね』という考え方です。実際に東海大ではこういう考えでコーチをやっています。この考え方はフットボール以外の分野でも、とても役立つことだと思います」
コーチングでは、一方的にやり方や考えを押し付けるのではなく、学生の考えにしっかりと耳を傾ける「対話」を大事にしている。コミュニケーションをとることで、お互いの間に考えの違いによるすれ違いが起こらないように注意しているという。
激動だった大学4年間を経て、林が肝に銘じていることがある。それは「大学スポーツはプロではない。そこでの結果よりも、社会に出た時に生きるプロセスを学ぶことが大切」ということだ。