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日大アメフト部“あの”「悪質タックル問題」で《消えた天才QB》の告白…日本一から急転直下「もうフットボールは無理やろうなって」
posted2024/02/18 11:05
text by
北川直樹Naoki Kitagawa
photograph by
Naoki Kitagawa
劇的な2017年シーズンを戦い抜き、27年ぶりの学生日本一になった日大フェニックス。多くのルーキーの活躍もあり、向こう3年間で日大がどのような成長を見せるのかを、誰もが期待した。
しかし、それからわずか数カ月後に、チームは大きな混沌へと向かっていくことになる。
日本中を巻き込んだ「悪質タックル事件」
甲子園ボウルを制した翌2018年のこと。5月にあった関学大との春季交流戦で、後に日本中の注目を集めることになる「悪質タックル問題」が発生。社会問題へと発展した。
監督はじめコーチ陣が総辞職して部の活動が停止となり、翌年の下位リーグ降格が決まった。急転直下、つゆほども思わなかった状況に追い込まれた。
「正直、『こんなに騒ぐんや』と感じたのが直後の気持ちです」
前年の日本一の際、1年生ながらエースQBを務めていた林大希は当時をそう振り返る。
林は当該の試合を欠場していたこともあり、このプレー自体を見ていたわけではなかった。チームのメンバーという意味では当事者ではあったものの、状況を完全には把握できておらず、自分たちの手の届かない場所で騒動がどんどん大きくなっていったというのが実感だという。
だが、日々メディアで問題が報じられ、糾弾される姿を目の当たりにすると、嫌でも現実を受け入れざるを得なかった。
「もう(フットボールをするのは)無理やろうなって。再起する未来がまったく想像できなかった。だから、自主的にトレーニングをするとか、そういう気持ちもなかったです」
正直なところ、最初は日々の地獄のようなトレーニングのキツさから解放されて嬉しい気持ちすらあった。しかし、そんな気持ちはすぐに消え去り、空虚さが残った。