プロ野球PRESSBACK NUMBER
《阪神に黄金時代は来るか》藤本敦士&筒井壮コーチの言葉でひも解く岡田タイガース2年目の進化「変わったなと思いました」「欲を出さないことですね」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/05 11:00
連覇を期して2年目のシーズンをスタートさせた阪神・岡田監督
あのビッグプレーの裏側
一方、岡田はカットマンが好返球と判断すれば捕らずにスルーすることも認める。これを生かしたのが、左翼を守るシェルドン・ノイジーの強肩だ。
象徴的な場面がある。昨年10月、クライマックス・シリーズのファイナルステージ広島戦は第3戦を迎えていた。2点リードの8回表、上本崇司が放った打球は左翼線への二塁打コースになった。だが、ノイジーの送球はカットマンの木浪をスルーし、ノーバウンドで二塁へ。上本は一塁を回ったところで慌てて引き返した。得点圏に進まれていれば、タイガースは窮地だった。だが、単打にとどめ、失点しなかった。筒井も「ノイジーのあのワンプレーは大きかった。あそこに飛んでも危険だというので相手は止めたと思います」と頷いた。
実はカットマンの木浪はノイジーとの距離を微調整している。シートノックを重ねて送球の質が分かるようになり、当初ほどノイジーに接近せず、内野に近い位置で中継するようになったという。その方が好返球をスルーした場合、より強い球威を保ったまま、目がけた塁に達するからだ。キャンプから長いシーズンをかけて「あうんの呼吸」を合わせていく。
藤本コーチの手応え
昨季、ナインの成長はシートノック中の変化に表れていた。岡田の就任当初は選手から「これ、カットですか?」と判断に迷う声も出たという。だが、シーズンが進むにつれて、こんな声が飛び交うようになった。「最後までしっかり投げ切れ!」。春先にはなかった光景である。
藤本も手ごたえを口にする。
「そういう言葉が選手の方から出始めたので、変わったなと思いました。たった1本ずつのノックですが、その1本を大事にしてやってくれているなと思いました」
堅守は連覇に欠かせない条件だろう。13、20年に2年連続優勝した巨人はリーグ最少の失策数で、守備率1位を誇った。沖縄での約1カ月間で、地道に守備の下地を作る。ノートに書き込まれた“正しさ”の総量が黄金時代の礎になる。