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《阪神に黄金時代は来るか》藤本敦士&筒井壮コーチの言葉でひも解く岡田タイガース2年目の進化「変わったなと思いました」「欲を出さないことですね」
 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph byJIJI PRESS

posted2024/02/05 11:00

《阪神に黄金時代は来るか》藤本敦士&筒井壮コーチの言葉でひも解く岡田タイガース2年目の進化「変わったなと思いました」「欲を出さないことですね」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

連覇を期して2年目のシーズンをスタートさせた阪神・岡田監督

 藤本はかつて遊撃や二塁を守り、この方針の下でプレーした05年の優勝メンバーである。指揮官の意図を説明する。

「一、三塁の時、1点は相手に与えてもいいから、割り切るということです。割り切れれば、内野手にとって守りやすい。(中間守備で)ボテボテの打球ならホームに投げなあかん、速い打球ならゲッツーやって、二兎を追わなくていいですから」

「確実に取れるアウトを」

 どのチームも中間守備のシフトを採用するなか、岡田野球は一線を画す。内野陣に気持ちのゆとりを持たせ、奪った併殺数の増加(昨年比13個増)にも繋がった。これまでは慌てなくていい場面でも、焦って送球がそれ、併殺崩れで残った走者から失点してしまうケースもあった。藤本は言う。

「確実に取れるアウトをしっかり取るのが第一です。基本はしっかり捕って、しっかり投げること。捕ってから、正確に投げることをキャンプから徹底しました」

 岡田には持論がある。

「カットプレーにしろ、ゲッツーにしろ、送球が一番大事やから」

 近年、外野手の送球は一人で本塁に投げるロングスローが主流になりつつある。とりわけ、パ・リーグの外野手に目立つ傾向だが、岡田野球はここでも独自路線を貫く。外野手の返球はカットマンまでの送球を基本線とする。キャンプのシートノックでも、身に染み込ませるため、外野手から内野手へのカットプレーの練習を繰り返す。

細やかな「送球の戦術」

 当然、岡田の外野手への要求は細かい。

「浮いた送球よりも、しっかりカットマンに投げる高さでの送球を徹底してくれ。浮くことで相手の進塁に繋がる。無駄な1点や2点を絶対に防いでくれ」

 送球を重んじる「岡田の考え」を、さらに昇華させたのが外野守備走塁コーチの筒井壮である。外野手にはこう指示した。

「カットマンの構えるグラブを突き抜けてホームにいくくらいの意識で投げ切れ」

 カットマンへの送球は一人でのバックホームに比べると距離が短く、外野手の腕が緩んで球を置きにいく恐れもある。低く強く送球させるため、筒井はアレンジして伝えた。そして、外野からの送球がカットマンを経由することでプレーの選択肢が広がり、相手走者を足止めできる。これが指揮官の狙いである。華やかなレーザービームよりも、一見地味なカットマンへの送球を重視するのは勝つための大切な戦術である。

【次ページ】 あのビッグプレーの裏側

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