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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「阪神に指名されたのは運命かもしれない」人生が激変…大竹耕太郎(28歳)が“現役ドラフト成功例”になった納得の理由〈オフは結婚&ハワイ旅行〉
posted2023/12/19 11:02
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Sankei Shimbun
It is only the chance for us to make that change.
(これは変革を行うためのチャンスに過ぎない)
【2008年11月4日 アメリカ・シカゴ 米大統領選を制したバラク・オバマの勝利演説】
阪神の日本一に貢献した大竹耕太郎は、1年前の今日を昨日のことのように憶えている。新天地で大活躍した今となっては「2022年12月9日」が人生で忘れられない一日になった。
あの日は昼から、東京・六本木でランチの約束をしていた。同じ左腕で尊敬してきたヤクルトの石川雅規と会える、またとない機会である。プロ野球で初めて行われる現役ドラフトの日であることは知っていた。自身は2年続けて、一軍では勝ち星を挙げられていなかった。早稲田大からソフトバンクに育成ドラフト4位で入団して5年目を終え、危うい立場に立たされていることも分かっていた。
「一軍で上がった試合は中途半端で結果を残せなかったですし、うまくいっていなかった。年齢的に27歳で、若い後輩のピッチャーも出てきていました。自分の力を出せていないという自覚はあったんです」
「10勝ぐらいできる力はあるでしょ」
秋季キャンプのメンバーからも外れた。疎外感は次第にある確信へと変わっていった。いろんな声が耳に入ってくる。移籍の噂も聞き、ロッカーを片づけたという。
石川と会ったのは、その頃である。心のわだかまりをプロ通算183勝の大ベテランにぶつけることはなかった。だが、その境遇を察したのか、こんなことを言われた。
「10勝くらいできる力はあるでしょ。環境が変わったら変わると思うよ」
鬱屈が募るなかで、勇気づけられる言葉だった。