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「海外ではベビーカーを押して来るジョッキーがいた」女性騎手→調教師として出産、宮川真衣が語る「日本の競馬界で“母親”になる難しさ」
text by
大恵陽子Yoko Oe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/02/12 06:02
調教師の父のもとに生まれ、騎手として海外にも遠征した宮川真衣(旧姓:別府)。調教師となった後、出産した宮川に話を聞いた
女性騎手の「その後」
――周りの人に助けられているつもりでも、結果的にみんなが働きやすい環境になっていますね。
宮川 そうなればいいなと思って、いろいろ考えている途中です。
――JRAも地方競馬でも女性騎手が増えたことで、近い将来、セカンドキャリアの問題も出てくると思います。たとえばですけど、出産後も騎手を続けられる環境があらかじめ整っていなければ、その選択をする人も少ないのではないかな、と。
宮川 やりたいことができる環境になってほしいと思いますよね。子供ができる・できないだけでなく、環境や制度上の問題で足踏みしてしまうことがないよう、環境を整えてほしいです。
――宮川調教師の場合は調教師になってからの妊娠・出産でしたが、もしも騎手時代なら、調整ルームというレース前夜から入室し外部と接触を遮断する制度が出産を阻んだ可能性もあるのでは、と考えます。
宮川 公正を保つには絶対に必要なものではあるんですけど、もし子供がいたら調整ルームに入室するのは難しいと思いますし、世界に合わせるとなると、ゆくゆくはなくなっていくのかなとも思います。海外の女性騎手招待競走に行った時、ベビーカーを押して競馬場に来るママさんジョッキーがいました。で、レースが終わればまたベビーカーを押して帰って行くんです。
今はまだ女性が働きづらい面が多い
――公正を確保しつつも、妊娠は望んだタイミングでできるとも限りませんから、女性のライフプランも尊重できるシステムができるといいですね。
宮川 調整ルームだけでなく、今はまだ女性が働きづらい面が多いです。たとえば高知競馬は通年ナイター。昼間は預けられる保育園があっても、レースが行われる夜間はなかなかありません。レースの開催中だけでも競馬場内の舎宅の一室にシッターさんを呼んで、そこで子供を見てもらえるとか、そういうサポートがあればありがたいなと思います。自分が携わるレースは日によって時間が異なりますし、レース間隔が何時間も空く時もあるので、競馬場外に預けに行くのはなかなか……。厩務員にも女性が今はすごく増えてきていますから、改善していけばいいなと思います。