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「森保さんへの質問だと思いますが」冨安健洋がアジア杯会見でリーダー論を自ら切り出した…日本代表“緊急ミーティング”後の舞台ウラ
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byNurPhoto/Getty Images
posted2024/01/24 11:09
インドネシア戦前日会見の森保一監督と冨安健洋
前線の選手は「なぜ守備陣はディフェンスラインを上げてくれないのか」という懸念を抱いていたし、DF陣は「前線からの守備が上手くできていないのだから、ディフェンスラインを上げるのは自殺行為だろう」といら立ちを覚えていた。
今回のミーティングで活発な意見がかわされたのは、ディフェンスラインをしっかり上げられていない状態の映像を見ているときだった。
ラインを上げ下げする役割を担う選手たちが「この場面ではもっと、上げるべきだった」と気づいたシーンもあった。一方で「なぜラインを上げられないか」を守備陣が説明し、中盤から前の選手たちの守備について改善を伝えた場面もあったという。
「あれでしっかりリセットできたと思う」
そうしたやり取りについて的確に説明していたのは、冷静沈着なことで知られる伊藤洋輝だ。チームの外に漏らしてはいけないことは口にはしない一方で、概要について誰にでもわかるように説明し、こう総括した。
「負けて、改めて課題も出て『チームとしてもう一回、自分たちがやってきたことをやろう』となりました。あれでしっかりリセットできたと思うんです」
伊藤に「そこまで整理された説明や言語化できるのは何故ですか?」と問うと、少し歯を見せ、こんな答えを返してきた。
「言語化できていますか? 僕はみんなが言ったことを話しているだけですよ!」
その笑顔は、良い話し合いができたと選手たちが感じていることを物語っていた。
明石家さんまに森保監督が語った“組織論”
「腹を割って話そう!」
そんな掛け声がなくても、危機感を覚えたときに、意見が活発に交わされるのが現在の日本代表だ。そのような集団になれたのは、森保一監督が選手の意見を聞き入れるタイプの指揮官だからこそだろう。
例えば、カタールW杯のスペインとの大一番で採用されたフォーメーションや戦術は、選手側から出されたアイデアだったのは記憶に新しい。
なお、選手側の意見に耳を傾ける理由について、年始に放送されたNHKの番組『スイッチインタビュー』で、明石家さんまに対して森保監督はこのようなニュアンスで明かしていた。
〈選手に対して戦略的、戦術的なこと、役割などを伝えないといけない面はあります。だけど国内での経験しかなかった自分が預かっているのは、世界各国のリーグで戦う選手たちです。だから『彼らの脳はすごいな』という認識から始まっていますし、自分の脳と同じだとは考えてはいけないと思います〉
もっとも、最終的な決断は監督が下しているという点について――インドネシア戦の前日会見で本人が強調しているので、ここに明記しておく。