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中村憲剛、内田篤人とS級受講…コーチ業10年で悲願「監督・北嶋秀朗」をつくった5人の指導者とは?「亀仙人と鶴山人から学べたのは僕だけ」
posted2024/01/19 17:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Criacao
フィジカルコーチに中村憲剛、GKコーチに内田篤人、ヘッドコーチに島田裕介という顔ぶれのスタッフ陣のサポートを受け、北嶋秀朗“監督”が学生たちを指導する。
週末に控えるゲームは、ACミランとの第2戦。第1戦を2-0で勝利したインテルは、どんな準備をして第2戦を迎えるのか――。
実際にあった2022-23シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝のシチュエーションに則って、その日のトレーニング構築を求められる――23年6月29日に行われたS級コーチ養成講習会のヒトコマだ。
「僕はインテルの監督という立場でトレーニングを組み立てたんですけど、インテルの5-3-2はもともと興味のあるシステムだったので、自分の志向とも合っていて、分析するのがすごく面白かったですね。(シモーネ)インザーギ監督の守備は、攻撃するために守備をしている、カウンターを発動するために守備をしているという感じで興味深かった。シンパシーを感じたので、5-3-2をもっと学びたいな、インテルは今後も追いかけるだろうなって思います」
S級ライセンスはJリーグのチームを率いるために必要な国内最上位の指導者資格である。取得に必要な期間はおよそ1年。4日間程度の集中講習会を何度も繰り返し、座学や指導実践に取り組みながら、監督に必要な学びや気づきを得ていく。さらに、Jクラブでの1週間以上の研修、海外クラブでの2週間以上の研修を行う必要もある。
「憲剛の考え方が面白かった」
23年度のS級コーチ養成講習会を受講したのは20人。クリアソン新宿のコーチを務める北嶋をはじめ、U-17日本代表ロールモデルコーチの中村、U-19日本代表ロールモデルコーチの内田、大黒将志(ガンバ大阪ユースコーチ)、佐藤由紀彦(FC東京コーチ)、平川忠亮(浦和レッズユースコーチ)、明神智和(G大阪ユースコーチ)ら錚々たるメンバーが切磋琢磨しながらS級ライセンスの取得を目指した。
座学の内容は、日本代表の森保一監督やU-22日本代表の大岩剛監督らによる「プロフェッショナルコーチング論」から、「メンタルトレーニング」「リーダーシップ養成プログラム」「チームビルディング」「プレゼンテーション実習」など多岐にわたる。
ともに学び、ディスカッションを重ね、ボールを蹴り合った仲間たちの存在は大きなモチベーションとなったが、なかでも北嶋の向上心をくすぐったのは、川崎フロンターレのレジェンドだった。
「憲剛とは同じグループになることが多くて。憲剛はフロンターレ式というか、ボールの持ち方から球の配り方からすごくこだわりがある。こうすればこうなるっていうイメージと理論が彼の中にしっかりあって、それを指導に落とし込んでいるんですよね。真ん中にボールをつけていく感じだとか、ここに入れて、そこでミスっていたら話にならないとか、厳しく言う。自分は大枠から入るんですけど、憲剛は技術から入っていくので、そうした違いも面白かったです」