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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「駒澤大には敵対心を持っていた」創価大の元選手・濱野将基22歳は、なぜ“因縁の相手”の大ファンになった?「話してみると…」「母校はファン目線ではない」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byNanae Suzuki(L)/Yuki Suenaga(R)
posted2024/01/16 06:02
昨年の箱根駅伝まで創価大の6区として3年連続で山下りを任された濱野。卒業後に駒澤大を熱烈応援するようになったきっかけを聞いた
大手町のオフィス街に朝日が静かに昇り始めるなか、母校の後輩である桑田大輔(4年)と推しの篠原らのウォーミングアップをじっと観察した。号砲が近づく頃には、大手町は熱気に包まれていた。ランナーを先導する1号車が動き出すと、交通規制が始まる。各大学の応援、ギャラリーの大声援も耳に入ってくる。そして、迎えた午前8時。23人の選手たちがスタートラインから一斉に飛び出した。
選手時代の記憶がふとよみがえってきたが、感傷に浸っている暇はない。各区間の選手たちを追いかけるべく、電車に飛び乗った。急ぎ足で1区の観戦ポイントである京急蒲田駅前へと向かう。
1区の15km過ぎ地点。一眼レフをぶらさげ沿道の1列目に陣取ると、寒さも忘れてじっと待ち構えていた。先頭で来たのは、藤色の襷をかけた“推し”だ。身を乗り出して、腹の底から声を張り上げた。
『区間賞を取れるぞ! 行け』
選手は個人の名前を呼ばれると、うれしいもの
声掛けは周囲の目を気にしてはいけないという。選手に思いを届けたければ、とにかく大きな声を出すことだ。少しでも躊躇すれば、周りの拍手にかき消されてしまう。元箱根ランナーの言葉には説得力がある。
「選手は個人の名前を呼ばれると、うれしいものです」
篠原が1位で通過したあとも気は抜けない。すぐに第2集団でレースを進める創価大の桑田が見えた。走る表情にはまだ余裕がある。出雲駅伝、全日本大学駅伝にはエントリーされていなかったが、11月に10000mで28分11秒08と自己ベストを更新したばかり。調子はすこぶる良い。「区間2位で来い」と話していた後輩には、的確なアドバイスを送った。
『落ち着いていけ。最後に上げれば、いいから。絶対に行けるぞ』
順調だった1区
個人的に1区の結果は申し分なかった。推しの篠原が歴代2位の好タイムで区間賞、後輩の桑田は4年生の意地を見せて区間2位。地力の差を考慮すれば、理想的な出足と言っていい。濱野は意気揚々と『花の2区』へ向かった。
<つづく>