- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
青学大・太田に並ばれた駒澤大・佐藤へ「絶対に気持ちでついて行け!」箱根駅伝の経験者→ガチ駅伝ファン・濱野将基が振り返る「引退して初めての箱根」
posted2024/01/16 06:03
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
JMPA
3区スタート時点で22秒差に「抜かれるかも」
1月2日の保土ケ谷は箱根駅伝のギャラリーでごった返し、午前9時前には二重三重の人垣ができていた。『花の2区』と呼ばれるコースだけあり、沿道の“最前列”を確保するのは困難を極める。
創価大OBの濱野将基は予想以上の混雜ぶりに困り果て、仕方なく声掛けを断念した。97回大会から昨年の99回大会まで3年連続で6区を走った箱根ランナーも、今はスーツで会社勤めする熱烈な駅伝ファンの一人。大勢の観客と一緒に先頭で走り抜けた駒澤大の鈴木芽吹、そして創価大のスティーブン・ムチーニを人垣の合間からじっと見届けた。3区への襷リレーが終わると、濱野は危機感を覚えた。応援している駒大に2位の青山学院大がじりじりと差を詰めてきていたのだ。7人をごぼう抜きし、区間賞を獲得した黒田朝日(2年)の走りには脱帽するしかなかった。ファン心理と元競技者の感情が入り交じる。
「トップを走る駒大と22秒差。『これは、やばいな』って。いまだから話せますが、3区で『抜かれるかも』という思いが頭をよぎりました。(駒大の)佐藤圭汰を信じていましたが、それ以上に青学大の太田(蒼生)くんは走りそうだなって」
濱野の目に焼き付いていた太田の快走
太田の快走は目に浮かんだ。前に追いつき、脚を溜めて、仕掛ける。同じ箱根路を走っていたからこそよく分かる。98回大会は3区で1人抜いて先頭へ、99回大会は4区で前を捉えて3位から2位へ。途中でサングラスを外し、爽やかな笑顔で順位を押し上げる光景が目に焼き付いている。
一抹の不安を胸に茅ケ崎駅で下車し、事前に下調べてしていた3区の15km地点に到着。狙っていた沿道の“1列目”に陣取り、声掛けの準備を整えた。スマートフォンで駅伝中継をチェックしながら待つこと約30分。佐藤と太田が小さく見えてきた。22秒差あったはずのリードは消え、2人は並走してどんどん近づいてくる。