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プロ棋士になるため、27歳で無職に…小山怜央が振り返る「3回目の受験」「不安の第一はお金のことだった」
text by
小山怜央Reo Koyama
photograph byJIJI PRESS
posted2023/12/24 06:06
今年4月にプロ棋士となった小山怜央。本人が棋士編入試験資格を得るまでを振り返る
ほっとした心持ちでの帰路、スマホを見るとLINEにたくさんのお祝いのメッセージが届いていた。リコーの将棋部の方や、昔からの将棋仲間からのおめでとうの声が嬉しかった。父にも連絡をした。もう結果は知っていたが、あらためておめでとうと声をかけてもらった。
当時、棋士編入試験の資格を得た要因を何度か聞かれた。改めて考えると思いつくことがいくつかある。
会社を辞めてAIを使った勉強量を増やしたこと。
奨励会の方々と研究会でたくさん指したこと。
それらはもちろん大きな要因だったと思うが、忘れてならないのは運だった。
間違いなく運があった。
私は先手と後手でかなり勝ち星に隔たりがある。一般的に先手の勝率が53%、後手が47%とされるが、私は先手が六割以上あったように思う。先手の勝率がよいとされる角換わりを採用することが多かったのも一因だろうが、先手のほうが勝ちやすいのは自分でもかなり感じていた。
師匠にランチで報告
そしてこの棋士編入試験資格に挑戦していた時期、かなり先手を得ることが多かった。おそらく10勝のうち、8勝か9勝が先手だったと記憶している。このときは、振り駒の運がかなり味方してくれた。
編入試験の資格を得た次の日、師匠の北島(忠雄)先生に連絡して、後日、ランチをご一緒させてもらうことになった。そして実際にお会いして、棋士編入試験を受験する資格を得たこと、そして受験したいことを伝えた。
<「挫折」編も合わせてお読みください>
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