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内定辞退しプロ挑戦も不合格…「そして私は就職浪人の大学5年生になった」元会社員の棋士・小山怜央が明かす挫折
posted2023/12/24 06:04
text by
小山怜央Reo Koyama
photograph by
JIJI PRESS
棋士となるにはほぼ不可欠といえる奨励会というルート。その奨励会の経験がゼロで戦後初のプロ棋士となったのが小山怜央だ。本人がその歩みを振り返った『夢破れ、夢破れ、夢叶う』(時事通信出版局)を抜粋して紹介する。全3回の第1回/第2回、第3回へ続く
この試験からプロになった人はいない
アマチュア六大棋戦で優勝すると、奨励会の三段リーグへの編入試験を受験する資格が得られる。試験の概要は、奨励会二段の例会に交ざり、そこで一局指して6勝すれば合格。負けられるのは2回までで、3敗したらそこで試験は終わりとなる。受験料は5万円。
2月から3月にかけての例会か、8月から9月にかけての例会に参加する形で行われ、合格すると三段リーグに参加できるが、在籍できるのは4期のみ。通常の三段リーグは26歳の誕生日まで在籍できるが、この試験を経て三段リーグに入ったものは4期しか戦う権利が得られない。
なお今までこの試験からプロになった人はいない。
挑戦せずに後悔するよりも…
それどころか、この試験を受けた人はこれまでのべ11人いるが、合格したのは今泉健司さんただ一人。ただ今泉さんは、この三段リーグを4期で抜けることができず、後にプロ編入試験を経てプロになっているので、このルートでプロになった人はいないのだ。とてつもなく狭き門である。
ただ、私はチャンスがあるのであれば、挑戦してみたいと思った。いつからか私の頭には「挑戦せずに後悔するよりも、挑戦して後悔したほうがいい」ということばが、たびたびよぎるようになっていた。父に相談すると、挑戦を応援すると言ってくれた。
これは受けるべきだろう。
そう思うようになった。
まず連絡した北島忠雄先生
アマ名人になったのは9月のことだ。次の2月からの例会に参加することもできたが、さすがに準備不足だろう。私は、翌年の8月からの例会に参加する形で、三段リーグ編入試験を受けようと決めた。