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NPB最高身長2mの“超大型左腕”はなぜ消えたのか?…《2020年巨人育成8位》阿部剣友の“育成→戦力外”で考える「早すぎるプロ指名」を巡る難しさ
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/12/19 17:27
戦力外の阿部剣友と同じ大型左腕である日ハム・上原健太は今季、自身最多の100イニング超の登板機会を得たが、開花には時間がかかった
完治しにくい故障や体調不良があったのかもしれない。戦力外通告の報道には、その理由が明かされないので事情はわからないが、それでも、いろいろな意味で、「もったいない!」という無念さが残った。
身長2mクラスの超・長身サウスポーの前例が、この国にはほぼない。
近いところで、193cmの楽天・弓削隼人投手は、日本大、SUBARUを経て24歳でプロ入り。その時点を「素質5分咲き」と考えても、高校卒業から6年経ってからだ。
今季、自身最多の100イニング超の登板機会を得た日本ハム・上原健太投手(191cm)の場合なら、今季が「開花」と考えれば、高校卒業から12年目の29歳。それほどの「時間」をかけないと、なかなか素質開花にたどり着けないタイプなのが、超・長身サウスポーであろう。
素質の開花に長い時間が必要な「大型左腕」だが…
長身・大型左腕には大きな夢をかけたくなるが、この国では、どうして大成した例がほとんどないのか。アマチュア野球の指導者たちも、しばしば口にするこの命題の解答。それは「素質開花までの長い時間を費やせる環境とプランニング、本人と指導者の辛抱強さと覚悟が不十分だから」なのかもしれない。
「野球」というスポーツは、ボディバランスという非常に難解な課題をコントロールしつつ、150キロ近い快速球をジャストミートしなきゃならなかったり、あの狭いストライクゾーンにボールを集めなきゃならなかったり、とても複雑なメカニズムを有する競技であろう。それだけに、大型選手ほど多くの時間とエネルギーと知恵と根気が必要なのは、一般論として、間違いない。
「育成なら」という言い方が、プロ側にある。一方で、「育成でも」という考え方が、選手側にある。あとを続けて、正確に言いきれば「育成なら契約金も年俸も安いし、ダメもとで獲れる(獲ってもいい)」であり「たとえ育成でも、契約金や年俸面で少ないのを承知の上で、何がなんでもプロに入りたい」となる。