マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER

NPB最高身長2mの“超大型左腕”はなぜ消えたのか?…《2020年巨人育成8位》阿部剣友の“育成→戦力外”で考える「早すぎるプロ指名」を巡る難しさ 

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2023/12/19 17:27

NPB最高身長2mの“超大型左腕”はなぜ消えたのか?…《2020年巨人育成8位》阿部剣友の“育成→戦力外”で考える「早すぎるプロ指名」を巡る難しさ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

戦力外の阿部剣友と同じ大型左腕である日ハム・上原健太は今季、自身最多の100イニング超の登板機会を得たが、開花には時間がかかった

 竹馬に乗っているかのようにも見える超・長身なのに、後方に蹴り上げていくフットワークが軽快で、とてもリズミカル。想像していた動きのバラバラ感がない。

 ブルペンで投げている様子を見ても、2m近い身長と長い四肢を連動させて、彼なりのボディバランスを保って投げている。

 高く抜けるボールがちょいちょいありそうなタイプに見えるが、打者のベルトより低いゾーンに、半分以上集めている。

 テークバックが深めなので左手を上げきれる時間がなく、スリークォーター気味の角度で投げているのが、彼に合っているようだった。

 翌年、最後の夏の南北海道大会、エース格で投げた阿部剣友投手。

 チームをベスト4まで押し上げ、甲子園に進んだ札幌一高との準決勝でも8回を3失点にまとめて、高校野球生活を全うした。

高卒で巨人に「育成8位指名」

 この時点で身長2mと報じられ、アベレージ135キロ前後の速球にスライダーと、スッと沈む系はチェンジアップなのか。大学からのアプローチはいくらでもあったろうが、プロ志望届を出したから、正直「アララッ」と思った。

 ドラフト当日、育成ドラフト8位で「札幌大谷高・阿部剣友投手」が指名された瞬間、私は中継の解説のマイクに、「うーん、ちょっと早いんじゃないかな」。思わず、そうつぶやきそうになって、言葉を飲み込んだ。

 ドラフトは「お祝いごと」……そう位置付けているのだから、ネガティブな表現はすべきじゃないと決めていたからだ。

 そして、このオフ、3年間のプロ野球生活の末、戦力外通告を受けた。

 3年で結論を出せるタイプじゃないだろう――報道に接して、最初の反応だった。昨季、今季は、「三軍」の実戦で登板の機会をいただいていたと聞いていたので、離陸の滑走路を走り出したぐらいのところなのかなと、勝手に考えていた。

【次ページ】 素質の開花に長い時間が必要な「大型左腕」だが…

BACK 1 2 3 4 NEXT
阿部剣友
読売ジャイアンツ
札幌大谷高校
弓削隼人
東北楽天ゴールデンイーグルス
上原健太
北海道日本ハムファイターズ

プロ野球の前後の記事

ページトップ