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甲子園の風BACK NUMBER
「練習中に土の中からフクロウが…」サッカー大国ブラジルで野球の指導? 兵庫の《県立進学校野球部》監督が注目される“異色の経歴”
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2023/12/05 06:00
兵庫県立御影高校野球部で指揮を執る今泉友秀監督。インドネシアやブラジルでの野球指導という異色の経験がある
派遣されたのはブラジルの大都市のひとつのサンパウロ。出発前に2カ月ほど研修を受け、到着後も1カ月ほど語学研修を受講。その後、ティーボール(※投手のいない野球を模したゲーム)経験のある8歳から9歳の日系人の子供を中心に指導する日々が始まった。
野球を学びたいという意欲はあっても、うまくいかずにかんしゃくを起こす子がいるのは日本と同じだ。ただ、やらされている感覚はなく、どんな状況でも進んで取り組み、試合で負ければ悔しくて泣くことはあっても、時間が経てば切り替えられる。「明るくて前向きなところはブラジルらしい」と南米の気質に触れながら、現地に溶け込むことに努めた。
その中で、彼らに日本の文化も知って欲しいという狙いもあった。
「彼らの普段の会話はポルトガル語ですが、野球指導の時は日本語も少し入れるようにしていました。ありがとうございました、とかね。数字を数えるのも“いち、に、さん”とか。“うまいねー”“頑張ろう”とか日本語を入れながら上達していくのを見てきました。小さい子でも“これはどうなの”と聞いてくるので、丁寧に教えてあげて、やる気になってもらえたらなと。やっぱり野球を好きになって欲しかったですし、サッカーを楽しんでいるように野球を楽しんで欲しかったんです」
練習中に土の中から突然フクロウが…
グラウンドは日本のような黒土ではなく赤土で粘土質。土の中に巣を作るフクロウがいて、練習中に土の中から突然フクロウが出てきたこともあった。大きな黄色い口ばしが特徴の南米を代表する鳥・トゥッカーノが大空を飛び交う異国は、新たな発見だらけだった。
「野菜や果物が美味しかったです。ただ、治安は良くないので、いかに(トラブルに)巻き込まれないか。そういった危険を察知できる能力を高めることを心掛けました。ボーっと歩いていたらダメ。常にアンテナを張りながら歩かないといけないんです。
服装はだいたい半袖短パン。貴金属は身につけず、お腹の部分に財布を忍ばせておくんです。日本人はきれいな靴を履いて服装がきちんとしているのですぐに分かるんですよ。僕はサンダルやボロボロの靴を履いて毎日を過ごしていました」
(後編へ続く)