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甲子園の風BACK NUMBER
「練習中に土の中からフクロウが…」サッカー大国ブラジルで野球の指導? 兵庫の《県立進学校野球部》監督が注目される“異色の経歴”
posted2023/12/05 06:00
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
「バモス!」
今年、38年ぶりの日本一となった阪神タイガースの選手たちが口にし、今では阪神の試合や関連番組を見る度に耳にすることが増えたスペイン語・ポルトガル語の「さあ行くぞ!」という意味の掛け声だ。
実は兵庫県立御影高校野球部では2年前からグラウンドで飛び交っていた言葉なのだという。
「バモス!と挨拶したら、アニーモ(元気出していくぞ)!と、ウチでは返答します。アニーモは声出てないぞ、とか、そういう感じの意味でもあります。ベレーザという掛け声もあるのですが、ベレーザは親しい者同士の挨拶です。実際は“素晴らしい”という意味なんですけれど、“いい感じか?”みたいな意味でもあるんです」
指揮を執って今年で5年目となる今泉友秀監督が、饒舌にそう教えてくれた。
兵庫県内でも有数の進学校である御影高校
南には阪神電車、すぐ北側にはJR、阪急電鉄が走り、住宅地に囲まれた神戸の中心地に位置する御影高校は、神戸地区内で有数の進学校としても知られる。1941年(昭和16年)に創立。甲子園出場はないが、今秋は地区大会を勝ち抜いて県大会に出場した。
9月9日の県大会の初戦・関学高戦。試合は1-4で敗れたが、ベンチからポルトガル語の掛け声が飛び交っていた。「バモス!」「アニーモ!」と発する選手たちの表情からは、8回に逆転されて劣勢になっても、どこか前向きな姿勢を感じた。
今泉監督は長田高校から神戸大を卒業後、伊丹西高で野球部部長を5年間務めた。
その後、別の普通科の県立高校へ転勤かと思いきや、当時の校長から「異校種に行くことはどうか」と提案された。実は当時、今泉監督自身は「伝え手として、このままでは子供らと接するのに物足りないと思っていて自分の見聞を広げて、自分の考え方を見つめ直したいと思っていた」という。その後、特別支援学校(養護学校)に赴任した。