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甲子園の風BACK NUMBER
強豪・東海大相模の監督がナゼ岡山に?…《センバツ確定》創志学園で“令和の学生”に思うこと「今を頑張らない子が多い。まずは今、頑張ろうよって」
posted2023/11/28 06:01
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
9回表、2死・二塁の場面で、創志学園(岡山)の6番・杉山大宙が思い切り振り抜いた打球が左方向へ転がった。広陵(広島)の三塁手・酒井綾希人が軽快な動きで捕球し、一塁へ送球して3アウト。この瞬間、広陵の3年連続の優勝が決まった。
2-1。秋季中国大会の決勝は1点を争う接戦となり、広陵に軍配が上がった。
「うーん、力……力がなかったなと。点差以上にね、大きな差を感じた一戦でした」
インタビュールームとして設けられた球場内の一室に、創志学園・門馬敬治監督の重たくも歯切れのいい声が響き渡る。接戦の末、敗れた悔しさと虚しさが混じった低いトーンが、指揮官の感情そのものを表していた。
0-0で迎えた4回表に創志学園が3番・豊島虎児の中前適時打で先制したが、5回に2死から1番の濱本遥大の右中間を破る適時三塁打で同点となった。8回には広陵が1死一、三塁のチャンスを作り、代打・澤田哉斗の高いバウンドのショートへの内野ゴロで三塁走者が生還し、これが決勝点となった。
「バッティングとか技術的なことよりも、濱本君に打たれた同点の場面。タイムを取ってね、インコースを突こうと言った中で、あの1球が甘く入ったんですよ。ランナーが二塁だったので、逆に何とかショートに(打たせた)というのも影響したのかなと。経験なのか、実績なのか、色んな差があるなと試合を終わって感じているところです」
春夏4度甲子園制覇の「超名門」から新天地へ
唸るように門馬監督は同点打の場面を振り返り、嘆いた。22年8月からチームを率いて、この秋から2年目に突入した新天地での監督生活。
99年に29歳で監督に就任した東海大相模では、春夏計4度、チームを全国制覇に導いた。その門馬監督が同校を退任するという報道が広まったのは春のセンバツを制して約4カ月後の21年7月。高校野球界に衝撃が走った。
最後の采配となった21年夏は部内に新型コロナウイルス感染者が続出したことで、神奈川大会の準々決勝を前に辞退。5回戦の藤嶺藤沢戦が最後の采配となり、9月30日付けで東海大相模高を退職した。