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「うーん、あまりにもひどい」9歳長男が突然ブラジル名門クラブから退団通告…それでも父が「うまく社会に入り込めている」と語るワケ
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byIBER CUP
posted2023/11/25 17:03
男女のブラジル柔道監督を務めた藤井裕子さんの長男・清竹君はフットサル、フットボールの技術を磨いている
「確かに“写真を撮らせて”とお願いしたら、満面の笑みで体操競技のアクロバティックなポーズを次から次へと決めてくれました(笑)」
――陽樹さんも、マンションの住人の間で行なわれているフットボール大会の常連で、点取り屋として有名だそうですね。
「住人にはアジア人がほとんどおらず、私も最初はあまり信用されていなかった。なかなかパスがもらえないし、出場機会も限られていた。しかし、高校までサッカー部で頑張っていたから、素人ではない。挫けずにプレーしてゴールという結果を出したらたちまち認められ、チームのレギュラーに、さらには中心選手になれた。
フットボールを通して、大勢の友人ができた。彼らとの交流を通して、ブラジル人のメンタリティーが肌でわかるようになったし、ポルトガル語の会話も上達した」
我々も子供たちも、当初は多少の苦労がありましたが
――裕子さんが柔道で、陽樹さんと清竹君がフットボールで、麻椰ちゃんが体操や水泳や柔道、といったスポーツを通じてブラジル社会に見事に溶け込んでいます。一家全員、日本語とポルトガル語のバイリンガルですからね。
「家の中では日本語で話し、清竹と麻椰には日本語の勉強もさせています。でも、家の外では完全にポルトガル語で生活しなければならない。
我々も子供たちも、当初は多少の苦労がありました。でも、今では言葉にもメンタリティーの違いにも慣れ、うまくブラジル社会に入り込めていると思います」
◇ ◇ ◇
家族全員が、それぞれの立場で外国の社会に溶け込む――。これは、言語、習慣、メンタリティーが全く異なることが多い日本人にとって、決して容易なことではない。藤井家の人々にしても、いくつもの困難な壁を、少しずつ、少しずつ乗り越えてきたはずだ。
その意味で、裕子さんと陽樹さん夫婦はもちろんのこと、清竹君と麻椰ちゃんにも敬意を抱かずにはいられない。<第4回「長男・長女に直撃」編へ続く>