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「従来の日本式の判定に」「肉親でも会うことは…」日本柔道躍進と“バブル方式”五輪、他国視点でどう感じた? ブラジル男子監督の日本人女性に聞く
posted2021/08/04 17:02
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
JIJI PRESS
7月31日、東京五輪の柔道競技の全日程が終了した。7月24日から8日間、男女各7階級に加えて五輪では初となる男女混合団体が行なわれ、日本は男女混合団体決勝でフランスに敗れたものの、総合成績で金9、銀2、銅1と他国を圧倒。2位が金2、銀3、銅3のフランスで、3位が金2のコソボだった。
世界最多の競技人口約200万人を有するブラジルは、銅2。2012年ロンドン五輪の金1、銅3、2016年リオ五輪の金1、銅2を下回った。
しかし、ブラジルは世界の柔道の中心地である東アジアと欧州から遠いという元々のハンディに加え、昨年3月以降、国内で新型コロナウイルスが猛威を振るい、長期間、柔道場が閉鎖されて選手強化に重大な支障をきたすという困難に直面した。このような状況を踏まえ、五輪前、ブラジル柔道連盟のネイ・ウィルソン強化部長は「1984年以来、9大会連続で獲得しているメダルを是が非でも手にしたい」と語っていた。
ブラジル柔道男子代表の監督は、愛知県出身の藤井裕子さん。広島大学の大学院卒業まで選手として活躍し、英国留学中の2010年に英国柔道代表のコーチとなって2012年ロンドン五輪で12年ぶりのメダル獲得に貢献。基本を徹底的に叩き込む指導法が評価されて2013年、ブラジル柔道男女代表の技術コーチに招聘され、2018年、男子代表監督に抜擢された。
メダル獲得は2つに終わったものの健闘したブラジル
リオに住み、元教師の夫・陽樹さんの全面的なサポートを得て、幼い2人の子供を育てながらブラジル柔道の強化に力を尽くしてきた。そして、指導者として3度目の五輪を自身の母国で迎えた。
五輪では、66kg級のダニエル・カルグニン(23)が準々決勝で世界ランキング1位(当時)のイタリア選手を倒す大金星をあげ、準決勝で阿部一二三(この大会で優勝)に敗れたが、3位決定戦でイスラエル選手を下して銅メダルを獲得した。
ただし、その後はメダル獲得が期待された100kg超級のラファエル・シルバ(34、過去2大会でいずれも銅メダル)が7位、男女混合団体も7位に終わった。
8月1日、選手たちと共にブラジルへ帰国の途に就いた藤井監督が、移動中にもかかわらず、電話インタビューに応じてくれた。
――66kg級で、カルグニンが快挙を成し遂げました。