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「妊娠して仕事に影響が出ては…」“在ブラジル日本人柔道コーチ”母と長男・長女の成長日記「習い事も遊びの延長のようなものです」
posted2023/11/25 18:30
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Hiroaki Sawada
裕子さんと陽樹さんの長男・清竹君は、両親がブラジルへ渡った翌年の2014年1月、リオで生まれた。
当時、裕子さんは母親から「すぐに妊娠はしないように」と釘を刺されており、自身も柔道コーチの仕事への影響を心配した。しかし、ブラジル柔道連盟の責任者は裕子さんからの妊娠の報告を聞くと、「全く問題ない。おめでとう」と祝福してくれた。
妊娠して仕事に影響が出るようなら子供に申し訳ない
裕子さんは「この恩を絶対に返さなくては」と考え、多少の無理をしながら出産直前まで仕事を続けた。「妊娠しているせいで仕事に影響が出るようなら、生まれてくる子に対しても申し訳ない」と考えたという。
清竹君が生まれて4カ月後、裕子さんは仕事に復帰。リオ市内の練習には清竹君を連れて行き、練習中は陽樹さんが面倒を見て、練習の合間に裕子さんが授乳した。文字通り、二人三脚での柔道コーチ生活だった。
清竹君は裕子さんから柔道の、陽樹さんからフットボールの薫陶を受けたが、より好んだのはフットボールだった。3歳のとき、マンションの管理団体が開設したフットサル教室に参加してボールを蹴り始めた。
2020年3月に新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大してフットサル教室も閉鎖されたが、この年の10月、6歳のときにフットサルの選手育成専門クラブ「アロウカ」で練習が再開されたので入団し、本格的な指導を受け始めた。当初は控えだったが、やがてレギュラーとなり、チームの中心選手に成長。2021年3月末、世界的な名門クラブでかつてジーコもプレーしたフラメンゴのU-7の入団テストを受けて見事に合格。日本人で初めて、この超名門クラブのアカデミーに加わった。
日本の小学生年代でも激しいポジション争いが
そこで、アロウカを退団し、フラメンゴでフットサルとフットボールの練習に励み、試合にも出場する日々が始まった。陽樹さんがすべての練習と試合に車で送り迎えをし、見守った(注:ブラジルは治安上の不安があり、また公共の交通機関もあまり発達していないことから、中流以上の階層であれば父兄が車で送り迎えすることが多い)。