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J3降格濃厚…大宮アルディージャの低迷は避けられなかったのか? 相次ぐ監督交代と主力放出で失ったもの「誰からも具体的な目標が提示されず…」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2023/11/16 17:00
10月7日、レノファ山口FC戦後のNACK5スタジアム大宮。連勝で残留に望みをつないでいたが、第40節から3連敗を喫して21位でシーズンを終えた
新体制発表会見でのつまずき「具体的な目標が…」
振り返れば今シーズンは、1月の新体制発表会見でつまずいていた。佐野秀彦代表取締役社長からも、原博実フットボール本部長からも、当時の相馬直樹監督からも、具体的な目標が提示されなかったのだ。
佐野社長や相馬監督は「目前の試合を全力で戦っていく姿勢」を強調した。しかし、それはどのチームも同じだ。だとすれば、J1昇格をはっきりと意識しているチームのほうが、目前の1試合に賭ける思いは強くなる。賭ける思いの違いがほんのわずかだとしても、拮抗した試合で勝点を手繰り寄せるのはどちらか。わずかでも強いチームだろう。
今シーズンの大宮は11勝6分25敗で終えたが、半分以上の13敗は1点差負けだ。75分以降の失点は、リーグ最多の23点を数える。さらに言えば、この時間帯の失点が20点をこえるのは大宮だけだ。終盤に粘り負けする試合が多かったことが分かる。
10月シリーズの日本代表に初招集されたMF奥抜侃志は、大宮の育成組織出身だ。2018年にトップチームに昇格し、22年夏にヨーロッパへ旅立った。ポーランド1部のクラブを経て、今シーズンからブンデスリーガ2部のニュルンベルクでプレーしている。
今夏の移籍市場では、MF柴山昌也がJ1のセレッソ大阪へ完全移籍した。21年にユースからトップチームに昇格した左利きのドリブラーは、J2で94試合の経験を積んでステップアップした。
今シーズンのJ2では、2種登録の高校生がJリーグデビューを飾った。7月の天皇杯でクラブ史上最年少での公式戦デビューを飾った市原吏音である。J2リーグでは7月16日の26節で初出場を記録し、最終節まで17試合連続でフルタイム出場を記録した。
185センチのサイズがあり、右利きでありながら左足も無理なく使いこなす。U-18日本代表の常連でもある彼は、アビスパ福岡在籍時の冨安健洋を彷彿とさせる。国内はもちろん海外へのステップアップも視野に入るだろう。
育成組織出身の選手は、彼らだけではない。23年は育成組織出身の選手が12人を数えた。育成事業の一環として指導者を派遣する東洋大学出身の選手も少なくない。シーズン最終節の東京ヴェルディ戦では、育成組織出身の8選手がスタメンまたはメンバー入りした。
育成組織出身の選手を他クラブへ引き抜かれるのは、大宮だけではない。しかし、将来有望な選手を移籍させながら、J1に定着しているチームはある。毎年のように主力選手を引き抜かれながら17年と18年にJ1参入プレーオフに出場し、今シーズンは3位でフィニッシュした東京ヴェルディのようなチームもある。