炎の一筆入魂BACK NUMBER
ドミニカカープアカデミーがパンデミックを乗り越え再始動…ゴミ捨てから始まるカープ式教育で第2のソリアーノの育成はなるか
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2023/11/08 11:00
マツダスタジアムの秋季練習に参加したドミニカからの練習生3人組
そしてスタッフ探しを始めた日から約1年後の9月、3人のアカデミー出身選手が日本へ降り立った。ラミレスは一塁と三塁を守り、パワーを売りとする。バスケスとロベルトはともにスピードとパワーを兼ね備えた外野手だが、まだまだ原石にすぎない。「来日=契約」ではない。育成選手契約すら勝ち取れるか分からない。
それでも、ここまでたどり着けたことに、田中は安堵感をにじませる。
「まだまだ粗削りですけど、チャンスをあげたかった。向こうでは道具もいいものを使えるわけじゃないし、スパイクに穴が開いている選手もいる。僕にとって、彼らは息子のような感覚。まずは育成選手を目指して、3人とも大成してほしい」
カープの弱点を埋められるか
秋季練習2日目には、ラミレスが守備練習に充てられた午前中に1人、打撃コーチ付きっきりでティー打撃を繰り返していた。二軍打撃コーチ時代に、サビエル・バティスタを練習生から支配下選手にまで押し上げた朝山東洋一軍打撃コーチは、期待感を口にした。
「バティ(バティスタ)が来た時よりもパワーがあるし、バットの軌道がいい。高卒新人と思えば、鍛えがいはある」
今季2位に躍進した広島だが、外国人選手が機能したかと言えば、物足りなさは感じられた。広島に限らず、近年は“助っ人”と呼ばれて来日した外国人が活躍できずに帰国するケースが目立つ。
「外国人選手を呼ぶだけでもお金がかかる。せっかくドミニカにアカデミーがあるのにもったいない。バティが日本に来たときは衝撃だった。だったらもう一度と。育成には時間がかかる。情熱を持ってやるしかない」
田中は3選手とともに、6日から始まる宮崎県日南市での秋季キャンプにも参加する。南国宮崎の青空の下、パンデミックを乗り越えて“外国人選手も育てる”「カープアカデミー」の第2章が幕を開ける。