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ドミニカカープアカデミーがパンデミックを乗り越え再始動…ゴミ捨てから始まるカープ式教育で第2のソリアーノの育成はなるか 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2023/11/08 11:00

ドミニカカープアカデミーがパンデミックを乗り越え再始動…ゴミ捨てから始まるカープ式教育で第2のソリアーノの育成はなるか<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

マツダスタジアムの秋季練習に参加したドミニカからの練習生3人組

 新しいスタッフには球団方針を理解させ、教育しなければいけない。ただ、日本とは文化も国民性も違う。前日に伝えたことも1日経てば忘れられてしまうことも珍しくなく、約束事も通じない。日本ではスムーズに進む作業も労力を要し、時間も手間もかかった。

 トライアウトでは、スカウト陣から送られてきた動画をもとに選手を招いた。どのチームにも所属したことのない選手だけでなく、米大リーグのアカデミーに所属していた選手もいた。中には米マイナーリーグと好条件で契約した過去のある選手もいたが、素行不良や指示に従わない姿勢、生活態度から契約を断念せざるを得ないケースもあった。

「うちには『練習ハ不可能ヲ可能ニス』というスローガンともいえる言葉がある。それはアカデミーの選手たちも同じ。野球に関しては量をしっかりこなして、私生活でも人として教育しないといけない。ゴミをゴミ箱に捨てる、という日本では当たり前のことから。アカデミーは、人間教育の場でもあるんです」

 11月末からトライアウトをはじめて12月に3年ぶりの開校にこぎ着け、田中は1度帰国し、今年2月に再びドミニカへ渡った。

定員20名の狭き門

 ドミニカは2月でも暑い。選手たちは平日の月曜から金曜まで、アカデミー施設で寝泊まりしながら練習。気温が上がる13時から16時を避けた午前と午後の計6時間みっちり行われる。メニューは、広島のキャンプ期間に行われるものに近い。日本式、広島式を重んじる。日本語教室も開かれ、グラウンドでは「ミギ」「ヒダリ」といった日本語も飛び交っている。

 27万平方メートルの敷地にはグラウンドだけでなく、屋根付きブルペンもある。牛やヤギもいる光景はのどかではあるが、選手にとっては毎日が生き残りの戦いだ。定員は20人。 2週間に1度トライアウトを行い、新たな原石が見つかれば入れ替えが行われる。アカデミーから給料が支払われる契約選手は再開校時の1人から6人に増えたが、狭き門に変わりはない。

 3月から6月末までは米大リーグ球団のアカデミーと練習試合を週に1度行い、実戦経験も積める。選手に捕手がいないため、ブルペン捕手がマスクを被る。

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