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ドミニカカープアカデミーがパンデミックを乗り越え再始動…ゴミ捨てから始まるカープ式教育で第2のソリアーノの育成はなるか
posted2023/11/08 11:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
NIKKAN SPORTS
青い空が広がった10月30日のマツダスタジアムで、広島東洋カープの秋季練習が始まった。主力組は免除され、若手の多くは宮崎のフェニックスリーグに参加しているため、わずか11人での再出発となった。その中には、背番号のない大柄な3選手も含まれていた。
ドミニカ共和国カープアカデミーのモイセス・ラミレス内野手、ジェリンソン・バスケス外野手、ネルソン・ロベルト外野手の3選手が、練習生として参加したのだ。
カープアカデミーは1990年の開校から、ロビンソン・チェコやヘロニモ・フランスア、広島を経て米大リーグでスター選手となったアルフォンソ・ソリアーノらを輩出したことで知られる。
首都サントドミンゴ市から東に80キロ離れたサンペドロ・デ・マコリス市にあるアカデミー施設は、新型コロナウイルスの世界的大流行により、2020年からの約2年半は閉鎖状態にあった。
パンデミック後の再出発
だが昨年9月から、再び動き出した。運営を託されたのは、2010年まで現役でプレーし、引退後は2020年までスコアラーを務めた田中彰だった。
アカデミーの選手たちから「ボス」と呼ばれた古沢憲司氏の後を受け、球団海外育成部に配属されたのは2021年1月だった。だが、当時はパンデミックの真っただ中。行きたくても現地に行けず、イメージを膨らませようにもうまく描けない日々が続いた。
水際対策の緩和から、昨年9月にようやくドミニカへ向かった。大きく広がる青空と照りつけるような熱さを放つ太陽の下、エメラルドグリーンに光る海は美しかった。だが、街なかにはゴミが散乱し、臭いが鼻を突いた。20カ月分溜め込んだ期待も抜けていくような現実を目の当たりにしながら、青い空を見つめ前だけを向いて歩を進めていった。
再開校に向け、まずはスカウトやコーチなど現地スタッフの面談から着手。通訳として来日するなど経験豊富なクレートやフェリシアーノのほか、ブルペン捕手らと契約を更新しながら、新たにアカデミー出身のゴンザレス投手コーチと契約するなどしてスタッフを揃えた。