「監督を拝命してまず思ったことは、このチームは確かに投手力は弱い。でも、攻撃は何とかなるということでした」

　吉田は1985年のチームを振り返ってこう語る。

「ただその攻撃も掛布とか真弓、バース、岡田と個々では力を出している選手がいるけれど、それが果たして集結してチームとして力を出し切れていたのかということでした。そこからどうやってチームをまとめていくかが勝負だと思ったんです」

1985年に阪神を球団初の日本一に導いた吉田監督　©︎Makoto Kemmisaki

当たり前のことを当たり前にやれ

　そのために“一丸”“挑戦”という言葉を掲げ、選手たちには常に「自分のできることをしっかりとやれ」「当たり前のことを当たり前にやれ」と口を酸っぱくして言い続けた。

「結果的にあのチームは自分の役割というのをそれぞれがしっかりできるチームだった。1番の真弓とクリーンアップはしっかり打ち、平田や木戸（克彦）などの下位の選手はつなぎに徹して、守備でもしっかり守れた。ただ、打つだけではなくて、そういう選手個々が役割をきちっと果たせたことが、強さの理由だったと思います」

　三冠王に輝いたバースに掛布、岡田、真弓を中核とした猛打の優勝という印象ばかりを残したが、このチームの本当の強さはそれだけではない。タレントが揃い、そのタレントがプロとして自分の仕事に徹して結束した。それがあの年の阪神の強さの秘密だったのである。

　1985年とは、猛虎がひとつになった年だったのである。

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