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「佐藤将光って誰?」と言われても…“36歳のRIZINデビュー”ベテラン格闘家が見せつけた“本物”の強さ「知らない人はそれでいい」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2023/10/07 17:09

「佐藤将光って誰?」と言われても…“36歳のRIZINデビュー”ベテラン格闘家が見せつけた“本物”の強さ「知らない人はそれでいい」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

10月1日の『RIZIN LANDMARK 6』でレスリング五輪銀メダリストの太田忍を破った佐藤将光。飄々とした36歳の知られざるバックボーンとは

五輪銀メダリストの太田忍にペースを握らせず

 案の定、太田との一戦で、佐藤は“らしさ”を存分に見せつけた。リオ五輪の銀メダリストである太田のボディロック(相手の脇に自分の腕を差してクラッチすることで相手をコントロールすること。上半身での攻防で雌雄を決するグレコローマン・レスリングが専門だった太田にとっては、十八番というべき攻め方)で再三テイクダウンを奪われながらも、すぐに立ち上がる。ケージに押し込まれても、脚部に小刻みにかかと落としを入れるなどして試合のペースを渡さない。1ラウンド、太田の豪快な反り投げ(ジャーマンスープレックス)で投げられると場内は大いに沸いたが、それでも佐藤が押さえ込まれることはなかった。

 アタックされ続けても、決定打をもらったり、グラウンドで危ない体勢に持ち込まれたりはしない。逆に3ラウンド、的確な左ジャブを連打し、左ハイキックをヒットさせた場面は佐藤の真骨頂といえるだろう。太田とスパーリングをした誰もが「極められたら動けなくなる」と口を揃える“がぶり”をさせなかったことも特筆される。振り返ってみれば、佐藤の出世試合となった2019年10月のハファエル・シウバ戦でも、似たような流れを作って勝利を掴んだ。

 どれだけやられても、最後にやり返す。佐藤の闘い方には、日本人が好む力道山的な趣さえあった。判定2-1とスプリットデシジョンになったのは、2ラウンドまでは太田が前に出る展開が多かったからにほかならない。試合全体をトータルして判定し、ダメージの有無を最重要視するRIZINのジャッジ基準だからこそ、佐藤の闘い方は評価されたのでないか。

 RIZINに登場する前は、武尊が契約したことで話題のシンガポールを拠点とする格闘技プロモーション『ONE Championship』に参戦していた。ONEでの通算戦績は4勝2敗。とりわけ前述したシウバ戦は試合前に圧倒的不利と予想されながらもTKO勝ちを収め、佐藤は一気に評価を高めた。

 それまでは“あと一歩”というところで足踏みする印象の強い選手だった。2010年開催のパンクラス版新人王『ネオブラッド・トーナメント』ではベスト4。同年にはドン・キホーテの子会社が運営していたSRC(SENGOKU RAIDEN CHAMPIONSHIP)で2連勝し、バンタム級アジアトーナメントに出場するという機会を得たが、ベスト8で涙を呑んだ。

【次ページ】 父はファッションデザイナー「派手な服がイヤで…」

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