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「佐藤将光って誰?」と言われても…“36歳のRIZINデビュー”ベテラン格闘家が見せつけた“本物”の強さ「知らない人はそれでいい」
posted2023/10/07 17:09
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
9月24日の『RIZIN.44』では、クレベル・コイケが金原正徳に敗れるというアップセットが起こった。余波は続く。その1週間後の10月1日に名古屋で行なわれた『RIZIN LANDMARK 6』は、マッチメイクの段階から「すったもんだ」の大会となった。
急きょRIZIN参戦、「佐藤将光」とは何者なのか?
当初、『RIZIN.44』でスダリオ剛vs.トッド・ダフィーというヘビー級のワンマッチが組まれていたが、トッドの「パスポートの配送トラブル」によって試合は名古屋にスライドされることに。しかしながらトラブルは解決せず、スダリオは韓国人ファイターのイム・ドンファンと闘うことになった。
同じく『RIZIN.44』では、榊原伸行CEOがLANDMARKで朝倉海の復帰戦にMMAデビューを迎える皇治をぶつけるという仰天プランをぶち上げた。いかにもRIZINらしい唐突な切り札の投入にファンは色めき立ったが、結局土壇場のところで正式発表には至らなかった(そう、この一騎打ちは、一度も正式に“やる”と発表されたわけではないのだ)。
「俺はMMAを遊びでやっているわけではない」
日夜MMAの練習に真剣に取り組む皇治の一言が全てを物語っている。
ドミノ倒しのようにトラブルは続く。LANDMARKで予定されていた井上直樹vs.太田忍も井上の病気で消滅してしまい、代替カードとして太田vs.佐藤将光がアナウンスされた。井上vs.太田は事前に印刷された大会パンフレットにも大トリとしてラインナップされていたが、太田vs佐藤はセミファイナルに落ち着いた。本人が「まあ僕じゃ足りないっていうのは理解できるし、所(英男)さんがメインになるのも理解できる」と話していたように、今回がRIZIN初参戦となった佐藤の知名度を考慮したうえでの措置だったのだろう。
確かに格闘技を見始めてからまだ日の浅いファンからすれば、「佐藤将光って誰?」となるのは仕方がない。反対に、参戦が決まった時点で「将光は強いよ」とその実力を素直に認める層も少なからず存在した。SNS上などでは、彼を認知しているかどうかを“にわか”かそうではないかの基準とする風潮すらあった。
この場を借りて、佐藤の人物像を紹介しよう。パンクラスや修斗などさまざまな団体を渡り歩き、15年以上もプロ格闘家として活動してきた36歳。見た目通り飄々としていて、掴みどころのない男だ。そんな性格は闘い方にも表れ、誰と対峙しても、ベテランらしいうまさや老獪さが滲み出る。佐藤との一戦が決まった時点で太田は「井上より強い」と警戒心を強めていたが、それは決してリップサービスではなかった。