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藤井聡太は携帯を“手元に置かない”…「研究会でもまったく見ない」師匠・杉本昌隆が明かす「八冠の集中力の真髄」
posted2023/10/13 06:01
text by
杉本昌隆Masataka Sugimoto
photograph by
Keiji Ishikawa
練習中にも発揮する集中力
集中力には、練習の集中力と本番の集中力があります。
本番で藤井は、純粋な視点で能力を発揮して、名人位を獲得したことは序章で述べました。藤井は、練習中にも当然のように集中力を発揮します。棋士にとっての練習とは、仲間との研究会もその一つですが、藤井は携帯電話をまったく見ません。
本番ではなく研究会なので、奨励会員でも棋士でも当たり前のように手元に置いている人は多いです。しかし、藤井は朝、家を出て、お昼休みも携帯はずっとカバンに入れたままです。手元に置いておきません。
藤井がようやく携帯電話を眺めるのは、帰る時のことが多いと思います。
余計な情報を入れないように遮断しているのです。
携帯、睡眠…藤井の行動
携帯電話を肌身離さず持ち、眺めるというのは、情報を受動的に受けるという意味において、時間を主体的にコントロールできていない状況です。子どもがゲームやテレビを観ている時、集中状態にあるかというと、これも受動的な状態のため集中しているとは言い難い。集中しているとは、能動的に自分が情報を得ている、いわゆる自分軸で行動できている時です。
また藤井は、対局前には十分な睡眠をとるように心がけています。大谷翔平選手が睡眠をとても大切にしているのは有名です。奈良の西大和学園では、寮生の寝具を睡眠しやすいものに変えたところ、通学生と比較して成績が向上したといいます。
これも時間を自分でコントロールすることで集中力を保つための一つの方法です。
藤井は名人戦を前にして、「持ち時間がこれまで経験した中でもっとも長い9時間なので、楽しみでもあるし、集中力を高めて臨みたい」との意気込みも語っていました。
思考の沼に入り込むことを自ら好む
集中状態が続く人は、脳のスタミナがあります。考え続けることが苦ではない藤井は、将棋に向かっている時は疲れを知らないのです。