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試合中もずっとストレッチ…男子バレー“静かな仕事人”宮浦健人(24歳)の原点とは?「俺について来い」ぶっ倒れるまでコートに立った伝説
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byYuki Suenaga
posted2023/10/05 17:01
試合中、ゴムチューブを使ってストレッチをする宮浦健人(24歳)。いつコートに立ってもいいように、準備を欠かさない
「スパイクのときに、上がったトスに対して自分が外側に入ってしまっていたところが気になりました。そこで2戦目はスパイクに入る位置を変えました。あとは、やるべきことを整理して、それを試合の前にイメージしたり、試合の最中もイメージして試合に臨みました」
敗れてしまったものの2戦目のエジプト戦から“自分らしさ”は取り戻せたと語る。
そうやって自分の映像を見て修正を図る習慣は、早稲田大時代に身に着けた。
「大学時代に松井(泰二)監督と出会って、スパイクのフォームを見つめ直したことが自分にとっては大きい出来事でした。大学では松井監督のゼミにも参加して、トレーニングの方法や栄養の重要性なども学んで、バレーボールに対する考え方が大きく変わりました。特にスパイクに関しては体全体を使って打つ方法を習得できて、今でも修正が必要なときには大学時代に学んだことを思い出しています」
宮浦の、短期間での修正能力が高いのは、立ち返るべき自分の姿のイメージがしっかりとあるからだ。
早稲田大の恩師・松井監督は振り返る。
第一印象は「思っていたより細い」
「鎮西高校時代の健人(宮浦)を見たときの第一印象は、『思っていたより細いな』でした。コートの中ではダイナミックにプレーしていたので、その印象でもっと大柄だと勘違いしていたのだと思います。スイングはずば抜けて速いし、体の使い方もうまいんですけど、下半身の使い方には改善の余地があるなと思いましたね」
両足が伸びきったままボールを叩いていたフォームを、膝から下をでん部側に引き寄せ、腰の回転でボールを打つようアドバイスを送ったという。
「膝から下が短ければ、腰が回るようになる。反対に両足をぶらっとさせたままだと腰が回らないので手打ちになってしまいます。当然ですが、ブロックアウトを取ろうと思っても、力がボールに乗っていないのでボールは飛んでいきません。バイオメカニクス的に見て『このままではボールに力が乗らないよ』『打球が速いのにはきちんとした理由があるんだよ』と健人には言いましたね。私はスポーツ科学の教員であって、彼らは学生ですから、そういった原理原則を理論で教えることが非常に多いのですが、どう体現するかは選手次第。健人は黙々とトレーニングや練習に励んでいた印象です」